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「ジョジョの奇妙な冒険」がマニアからトレンドへ変貌した理由・時代背景を考察

岸部露伴 アニメ・漫画・ドラマ

荒木飛呂彦先生のジョジョの奇妙な冒険第1部を初めて読んだ時、普通じゃない凄さにビリっと感じたのを記憶しています。例えばブルドーザーの音を聞いただけでそれとわかるような、力強さみたいなパワーです。人間賛歌を描くということは普通じゃないリアリティーを表現する能力が必要で、先生が(岸部露伴)使いだからこそできたとも言えます。

岸部露伴が荒木先生の目指す憧れのスタイルを登場するキャラクターに投影して描がかれていることは有名な話です。幸田露伴じゃなくて岸部露伴なのが面白いですよね。

今回、登場したての頃はマニアの根強い人気に支えられていただけの印象だった「ジョジョの奇妙な冒険」がツイッターでもトレンド入りするほどの知っていて当たり前な存在へと変わった理由について、時代背景も交えて考察しようと思います。

「ジョジョの奇妙な冒険」で描かれる「人間賛歌」

私が小学生の頃、少年ジャンプでキン肉マンや北斗の拳が全盛期だった頃、筋肉隆々のカッコいい青年が主人公で悪い奴をやっつけるという、お決まりの定番漫画が大量に世に出回り始めました。

それはひとつの時代の真実でもあるので仕方ないことだと思いまも。事実、ジョジョの奇妙な冒険第1部・2部・3部ともに、主役級の登場人物は例外なく筋肉隆々に描かれてましたし、荒木先生自信もそういった時代背景には大きく影響を受けていたことを認めておられます。

ところが、そんななか筋肉隆々で肉弾戦を繰り広げるという展開も一般的と評価されて当然の時代に、なんと「人間賛歌」を描くことを表明している漫画家など、見たことも聞いたこともありませんでした。

「キン肉マン」ではゆで卵先生が「正義と友情」を描いてくれましたが、「人間賛歌」は明らかにその上を行っています。少年雑誌に連載される漫画のコンセプトが「人間賛歌」と決まった時、はたしてどれだけ多くの関係者が時代に似つかわしくないと思ったことでしょう。

しかし、それは全くの見当違いで、「人間賛歌」を貫いた先生は一足先に30年後を描いてしう大業を成してしまったのかもしれません。

吸血鬼に波紋で挑む斬新なアイデア

古代チベットから伝わる太陽の呼吸法である波紋を練り上げて、その呼吸法から繰り出される手足による攻撃で不死身の吸血鬼や吸血鬼をもエサとする究極生物を倒すという発想も斬新です。

同世代の「北斗の拳」では経絡秘孔を突くことで相手を内部から破壊するという物語のキーになる技がありますが、波紋も経絡秘孔も東洋に古来から伝わる秘伝の技術であるという点で似ています。

ただし、不死身の吸血を相手にする「ジョジョの奇妙な冒険」と人間同士が殺し合う「北斗の拳」はそもそもホラーファンタジーとアクションドラマぐらいの違いがあります。

それにしても、こんなに面白い作品が連載されていた当時の少年ジャンプは、漫画ファンにとっては宝物のような存在で、それこそ毎週火曜日の発売日を楽しみにして生きていたほどです。

吸血鬼をエサだったことにする発想の凄さ

「ジョジョの奇妙な冒険」の第1部を読み終わってディオが海の底に棺桶に入ったまま沈んでしまった時は、後で復活することなど全く想像してませんでした。

はたして荒木先生のなかでは後で復活してもらう前提で作品の構成ができていたのでしょうか?

聞いて見なければ分かりませんが、後付けにしてもストーリー展開が面白すぎて納得させられます。

第1部が終わって第2部が始まった時、ジョナサン・ジョースターが命をかけて戦った吸血鬼が、実は究極生物のエサに過ぎない存在だったということが明らかになり、ショックだったとのを覚えています。

読み進めていくうちに、実は究極生物も太陽を克服することができず、悲願である太陽克服のために何百年にも渡る冬眠とエイジャの赤石探しの旅を繰り返していることがわかります。

とてつもなく強い敵が現れて、そいつを倒すと後からもっと凄い奴が登場して新たな旅が始まるというのは、漫画でよく使われるお決まりの展開ですが、吸血鬼がエサだった時はショックでした。

なんか、ジョナサンの死がエサを倒すためだったのかと思うと存在が小さく感じられたからです。でも、それはジョセフ・ジョースターの底抜けの爽やかさが払拭してくれるという、展開の移り変わりも見事なものです。

スタンド能力という前代未聞の発想

第1部・第2部でさんざん波紋の呼吸法を使って素手で化物を相手に戦ってきた物語が、50年後には精神エネルギーが具現化したスタンドという形あるパワーとして表現されるようになります。

たぶん、頭の固い人とかは絶対に誰も読まないと思ったでしょうね。この辺が荒木先生が日本の一般的な常識というか平均的な概念を超越してスタンド使いである自分に気付いた瞬間だったと思うんです。

「要は認識することですじゃ!HBの鉛筆をべキッとへし折れて当然と思うことのように、認識するのですじゃ!」

エンヤ婆がディオに教示したように、荒木先生自信も自分が時代をリード、否、30年先を歩む存在となることを自覚したのではないでしょうか?

事実、目に見ない幽霊のような存在を形あるものとして具現化するという手法で漫画を描いたのは、荒木先生が世界で初めてなのですから。

アメリカンコミックではヒーローが目からビームを出したり、車を投げ飛ばしたり、空を飛んだり、人間離れした力で芸を披露するというのが常識ですが、荒木漫画では精神エネルギーをスタンドという形で描いたのです。

そして、日本の漫画界ではスタンドをモチーフにした能力系のキャラクターが活躍するというコンセプトの作品が雨後の竹の子のように次々と登場するようになったのです。

いったい、なんという凄いことをしてくれたのでしょう!

スタンドはスタンドでしか倒せない

スタンド使いの闘いにおいて相手を倒す方法は、スタンド使いを倒すかスタンドを消滅させるかのどちらかです。

そして、「スタンドはスタンドでしか倒せない」という譲れない縛りがあります。

スタンド使いである人間が、他人の支配するスタンドに触れることができず、決して直接的に影響を及ぼすことができないことを意味します。

これはある意味、作者である荒木先生自信を苦しめるルールだったと思われます。なぜなら、強すぎて絶対に倒せそうにないキャラクターとか描いちゃったら、どうやって倒すか自分で悩む羽目になると思うんです。

デス・サーティーン

・夢の世界を支配し、夢を見てしまった者は夢の中のルールに逆らえない。

チープ・トリック

・背中に張り付く絶対に離すことができず、無理に引きはがすと張り付かれた人が死ぬ。

マン・イン・ザ・ミラー

・鏡の世界を支配し、中に入った人間は一切の手出しができない。

エンリコ・プッチ

・時の流れを加速させ、その時の中で自分だけが不変の存在を保つことができる。

本当のところは聞いて見ないと分かりませんが、この難題にも見事に応えてくれているのが「ジョジョの奇妙な冒険」だと思うんです。

敵が強ければ強いほど、難かしければ難しいほど倒した時の爽快感も倍増するというものです。

第4部の吉良吉影や第6部のプッチ神父は、スタンド使いがスタンド能力を使うだけではとても倒すことのできない驚異的な存在でした。

ところが、そういう最強にして最悪の敵に対して、スタンド能力を持たない生身の少年が、勇気と希望だけを武器に行動することで突破口を開くという、ルールを超越した精神の純粋さが描かれています。

でも、よくよく考えるとそれこそが「人間賛歌」なのだと改めて思うのです。

どんな最悪な状況だろうと、どんな最強な敵だろうと、人間が人間であることの凄さに勝る力など存在しないのだということを「人間賛歌」は教えてくれているように感じます。

奇抜で斬新かつ個性的なファッションスタイル

イタリアのミラノコレクションとかに登場しそうなデザイン豊かな服装のファッションは、見ていて決して飽きることがありません。

どうやったらこんな服が買えるか考えたことがありましたが、当時はまだネットも普及しておらず、様々な情報を独自で熱心に探究されている荒木先生だからこそできる、日本にはないモノから着想を得るという特技だったのでしょう。

登場するキャラクターのファッションが一番洗練されていたのは、間違いなく第5部の黄金体験ですが、舞台がイタリアだったこともあり当然その点は特に意識して描かれていたように感じます。

個人的に特にお洒落度が高いと感じたメインキャラクターは下記の4人です。

ディオ・ブランドー 

ジャン・ピエール・ポルナレフ

岸部露伴

ブローノ・ブチャラティ―

プロシュート

特にブチャラティ―のファッションはカッコいいと思っていて、ヘアースタイルも服のファッションとマッチしてると言えます。

なんと言ってもジッパーをポイントにしたところが奇抜ですね。

ジッパーとは開くものなので、それが体中に付いているということは、そこが開くということです。

でも体中に付けることで本来の意味を忘れさせ、お洒落なアイテムに早変わりしちゃってるんですね。

他にも帽子を被ってるキャラが登場することが多々ありますが、こういうのも他の漫画ではあまりっ見られないですね。

メッシーナ師範代

テレンス・トレント・ダービー

グイード・ミスタ

ウェザー・リポート

帽子といっても厳密にはバンダナとかターバンみたいなものも多いですが、とにかく被り物でアクセントを付けるファッションスタイルもセンス抜群と言えます。

ジョジョ立ちと呼ばれる体の曲がったポーズ

高校生の頃、ジョジョファンが周囲に全然いなくて読者が私だけでした。

読まない理由を友人に聞くと、「なんか気持ち悪いから」とか「絵がしつこいから」、「なんか理屈っぽい」という似たような理由が多かったです。

別に他人の趣味に合わせる必要もないので私は「ジョジョの奇妙な冒険」を愛読し続けましたが、不思議なことに20歳を過ぎ、30歳を過ぎ、40歳を過ぎようかという頃になってようやく、「ジョジョってめっちゃ面白いわな!」と今さらのように騒ぎ立てる人が増えました。

これはジョジョが一部の芸能人の間で取り沙汰されて「アメトーク」などでブームになったことが大きなきっかけだったと思われます。

ともあれ、あんなに皆に気持ち悪いとか酷評されていた、あのぐにゃっとした立ち方や、意味不明な恰好の良さが21世紀の今頃になってようやく認知されたということです。

荒木先生はジョジョに登場するキャラクターの変わったポーズについて、古代の西洋美術の作品から着想を得ていることをほのめかしています。

日本の各地で開催された「荒木飛呂彦原画展」では、荒木先生の作品に対する思いや、作品を作るうえで考えたことなど、ファン必見の先生の生の声の録音をイヤホンで聞けるコーナーがありました。

私は大阪の天保山で開催された時に友達と3人で行きましたが開館前から凄い行列で、最後にジョジョグッズの販売コーナーでお目当てのポスターが売り切れで買えず悔しい思いをしました。

でも、ディオとジョリーンのポスターだけは一部ずつゲットできたので良かったです。

最後まで「人間賛歌」を描き続けた一貫性

多くの漫画作品では、本来の趣旨から脱線して気付いたらわけのわからない方向へ進んでしまっていたという作品が散見されます。

急に連載を打ち切ったりする漫画家がいることも事実ですし、病気などの理由でやむを得ない事情が背景にあることが多いです。

ところが、荒木先生は連載の出稿締め切りに遅れたことはただの一度もないそうです。

それには、荒木先生の私生活が自分できちんと管理されていたことも大きな理由だと考えられます。

「ジョジョの奇妙な冒険」は表紙をめくった最初に1ページ目に荒木先生の最近の一言が毎回書かれていて、それを読むのも楽しみの一つでした。

小さいころに祖父とよく竹を盗みに行った話とか、やっぱりリアリティーのある小話が多いのですが、そのなかに「疲れないように息を吐きながら描く方法に気付いた」というのがあったのを覚えています。

やはり漫画家の生活はストイックで相当疲れるだろうことは世間でも言われることですが、それを自分で工夫しているところが地味にカッコいい。

ちなみにファッションセンスもカッコいい。ベストドレッサー賞を受賞した時はテレビでも放送されてましたね。

「人間賛歌」を最後まで貫いたのは、ただ意思が強かっただけじゃなくて、意思を貫くための工夫というか、ただがむしゃらにやってきたんじゃないんだなと感心させられました。

登場するキャラクターが過去のキャラクターと相関関係のあるものが多く、ストーリーの構成が複雑で、矛盾が出ないようかなり労力を必要とされたことが読んでみて分かる作品ですが、それも荒木先生ならではスゴ技です。

最終的にはプッチ神父が宇宙を一巡させた後の世界でも「人間賛歌」を描いた「ジョジョの奇妙な冒険」は、荒木飛呂彦という稀代で非凡な漫画家の信念を見事に表現した伝説の作品として今後も語り継がれることでしょう。

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対象作品:『ジョジョの奇妙な冒険』第1部~第6部

ジョジョの奇妙な冒険についてもっと詳しく方には下記の関連記事も参考になります。

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「ジョジョの奇妙な冒険」の最新情報を知りたい人は、下記のリンクからテレビ放送の開始日などを知ることができます。

「ジョジョの奇妙な冒険」公式ポータルサイト

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