杉元はアシリパに連れられて川魚を捕りに行き罠で大量のエゾハナカジカを捕獲します。鍋に入れる前の下処理の手伝いを頼まれた杉元でしたが小刀を忘れたことに気付き取りに戻ります。途中アマッポという毒矢の罠にかかりかけますが、アイヌの男に呼び止められて命拾いします。それはアシリパの叔父にあたる男でオソマの父親でした。
男は杉元に金塊の件について知っていることを少し話してくれます。
あの砂金はもともとアイヌの先祖が集めたものなのに、一部の男たちが武器を買うために手を付けたことでワッカウシカムイ（水の神）の怒りをかったのだと皆が信じていること。
アイヌは川で洗濯もせず排泄物も川に流しません。そこまでして汚さないようにしている川で砂金など採るからカムイの怒りをかったのだと。
さらに、アイヌが争いのために川を汚すなど絶対にあってはならないことだと力説します。
そして、あの砂金は魔物が付いている呪われたものだったのだと感慨深くかたるのでした。
カジカ鍋を御馳走になる杉元
村に戻った杉元たちは捕れた魚をフチに渡します。
フチは受け取った魚を手にとりヒンナヒンナすると、自分の首の後ろにまわして何かしているようです。
アシリパが言うには、人にはみなそれぞれ憑神がいて、人に何かをもらったら守り神にお裾分けするのだという。
アイヌの信仰ではトゥレンペといって人には皆生まれた時から憑神が付いていて、首の後ろから出たり入ったりしている。
そして、人それぞれの能力はトゥレンペによって決まっているのだが、フチが見たところ杉元には力強いトゥレンペが付いているそうだ。
杉元はアシリパさんが守りかみに感謝しているのを見たことがないことに気付いたので聞いて見ると、この村では年寄りしかやっていないと流されてしまいます。
アシリパは伝統に囚われない考え方をしていることが分かります。
やがてカジカ鍋が出来上がり、杉元は久しぶりに食べる根菜類や濃厚な出しの味に浸りますが、これに味噌を入れたらもっと美味しくなるのではと、懐から味噌を取り出します。
まだ味噌がウンコでないことを信用できないアシリパはオソマを食べようとしているといって怒りだしますが、杉元はお構いなしにフチにも味噌を勧めます。
なんと、フチはヒンナしてから味噌を美味しく食べてくれました。
これを見たアシリパはフチの憑神にオソマを食べさせたとして、杉元にストゥという棒で制裁を加えます。(笑)
2人の様子を眺めるフチの表情から、アシリパと杉元の将来を本気で願っているフチの思いがヒシヒシと伝わるエピソードでした。
アイヌの子供遊びとアシリパの笑顔
食事を終えて外に出ると村の子供たちアシリパに遊んで欲しいとおねだりします。
子供たちはキサラリという耳長お化けを意味する木のオモチャを使って、窓の外からこの世の者とは思えない声を出して子供を脅かす遊びの脅かし役をして欲しいのです。
アシリパに言われて試しに子供たちを脅かせてみる杉元でしたが、子供たちはちっとも怖がってくれません。
ところがアシリパがやると子供たちは本気で怖がり、オソマなど怖くてオシッコを漏らしてしまうほどでした。
杉元は子供たちを相手に無邪気な笑顔を振りまくアシリパを見て、少女の幸せな姿に心を奪われます。
実はこの時、杉元はアシリパのこの笑顔がいつまでも続くことを切に願っているのでした。
本気でアシリパの幸せを願う杉元の選択
やがて夜になり、アシリパも子供たちもフチの家で寝てしまいました。
狼の遠吠えが聞こえると話しだすオソマの父親に対し、以前レタラを見たことがあった杉元はレタラのことを話します。
するとオソマの父親はアシリパとレタラの出会いについて教えてくれました。
レタラはまだ小さかった頃、ヒグマに襲われているのを助けて村に連れて帰り、それ以来アシリパは狩りにレタラを連れて行くようになったのだと。
雪のように真っ白だったので、「白い」という意味でレタラと名付けられました。
ところがある日、狩りに連れて行ったレタラが遠くで狼の遠吠えを聞くと、自身のアイデンティティーに目覚めてアシリパのもとを去ってしまったのです。
誇り高きホロケウカムイは神と人間は一緒にいるべきではないと判断したのだとオソマの父は考えます。
「レタラが去ってからアシリパは笑わなくなった」
しかし、最近は良く笑うようになったようで、「杉元さんと山にいるのが楽しいんだろ」と意味深な言葉を言い残し、オソマを連れて出て行きました。
そして、フチが杉元に近寄り手をとって語り掛けます。
「アシリパは私の宝物。どうかいつまでも彼女と一緒にいてください」
フチの誠心誠意のお願いでしたが、杉元はアイヌ語が分からなかったので、「わかったよ、お婆ちゃん」と、優しく返事します。
ところがこの時、杉元はアシリパから離れることを決意していました。
子供たちと笑顔で触れ合うアシリパの本当に幸せそうな笑顔を見た杉元は、アシリパを金塊の争奪戦に巻き込みたくなかったのです。
その夜、杉元は誰にも何も言わず村を去ってしまうのでした。
鶴見中尉という『死神』
翌朝、黙って村を出て行った杉元に腹を立てたアシリパは杉元の後を追います。
2人で狩りをした小屋にいないか見て回りますが杉元はみつかりません。
そこでアシリパは杉元を探し出すとっておきの方法を思いつきます。
アシリパはレタラを使って臭いを辿り、杉元を見つけることにします。そこで、鹿の通り道で鹿笛を鳴らし、勘違いして出て来たレタラを連れて行くことにします。
その頃、杉元は町で入れ墨人皮の手がかり探すため一人で聞き込みをしていました。
そして、ある遊郭で店の娘が入れ墨の客に暴力を振るわれたという話を聞きつけ、その娘を連れてくるからとソバを出されて待たされます。
ところがやってきたのは第7師団の二階堂兄弟で杉元はまんまと罠にかかったのでした。
第7師団は入れ墨のことを嗅ぎまわる人間を探すことで杉元に辿り着けると考え、町の遊郭まで手を回していたのです。
大勢の隊員に囲まれ銃でボコボコにされた杉元は二階堂兄弟に殺されそうになりますが、ギリギリのところで鶴見中尉に救われます。
鶴見中尉は重要な情報を持っているかもしれない杉元を簡単に殺すことを許さなかったのです。
「私はお前の死神だ。お前の寿命の蝋燭は私がいつでも吹き消せるぞ」
鶴見中尉は不敵な笑いを浮かべると杉元を第7師団のアジトへ連行して監禁します。
杉元はアジトで鶴見中尉から尋問を受けます。
「川岸で瀕死の部下がみつかり、指で文字を書いた。『不死身』」
「尾形上等兵をやったのはお前だな？」
この時、瞬きひとつせず動揺した様子を見せない杉元を見て、鶴見中尉はこれが不死身の杉元本人であることを確信し、
「不死身で蝋燭の炎が消せぬというのなら、私が蝋燭の頭をバリバリかじって削ってやる」
と絶対に諦めない決意を示します。ここまで聞かれても白をきる杉元は、もう要は済んだと言わんばかりに勝手に出て行こうとします。
さらに金塊と入れ墨人皮の話を持ち出されても知らないふりを貫き、「お前らの対象は頭大丈夫なのか？」と二階堂兄弟に訴えた次の瞬間、鶴見中尉の食べていたみたらし団子の串が杉元の頬を貫きます。
鶴見中尉は、戦場では英雄だった自分たちが帰国したら放浪生活を余儀なくされるという現実に不満を持っており、金塊を手に入れるのはアメリカから大量の武器を購入し、北海道を制圧して本土と戦うためだと本心を明かし、杉元に仲間になるよう提案します。
ところが杉元は、「付き合ってられん」とそっけない返事をしたため、拘束され監禁されてしまいます。
白石由竹との再会
一方、レタラを連れて杉元の臭いを辿って来たアシリパは、杉元が置いて行った靴下を手掛かりにしていましたが、それは杉元が白石と川に転落した時に間違えて入れ替わったものでした。
そのため、レタラは臭いを辿って脱獄王の白石を見つけてしまい、アシリパは白石と再会することになります。
白石はアシリパがここにいることに驚くとともに、昨日顔に傷の入った男が第7師団に連行されたという町の噂を思い出し、それが杉元だったのだと確信します。
事情を知ったアシリパは白石を毒矢で脅し、杉元救出の手助けをするよう要求します。
白石は嫌々これに応じ、第7師団のアジトへ向かいます。
そのころ杉元は第7師団のアジトで両手・両足を椅子に縛られて監禁されていましたが、人格的に問題のある二階堂兄弟が杉元を狙っていました。
二階堂兄弟は鶴見中尉の言いつけを破り、部屋に忍び込み杉元を殺そうと軍刀で襲い掛かります。
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