ITパスポートは事務職が取得すると業務に役立つことが多いので事務職の人ほど受験したほうが良いと言われますがその通りです。ITパスポートはIT技術者が業務を遂行する上で必要になる必須知識が問われることはなく、ストラテジ系・マネッジメント系に代表されるITに関する幅広い知識や法律について問われるのでまさに事務職に相応しいと言えます。
ITパスポートはITを活用する人が備えておくべき基礎知識を証明するもの
まずそもそも論ですがITパスポートはIPAの公式サイトにおいて以下のように定義されています。
iパスは、ITを利活用するすべての社会人・これから社会人となる学生が備えておくべきITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験です。
具体的には、新しい技術(AI、ビッグデータ、IoT など)や新しい手法(アジャイルなど)の概要に関する知識をはじめ、経営全般(経営戦略、マーケティング、財務、法務など)の知識、IT(セキュリティ、ネットワークなど)の知識、プロジェクトマネジメントの知識など幅広い分野の総合的知識を問う試験です。
IPA>ITパスポート試験>Iパスとは より引用
上記の通り、ITパスポートはITを利用するのが常識となった企業活動において、必要最低限の基礎知識を持ち合わせていることを証明するための手段として利用できることが分かります。
ただし、ITパスポートで身に付けた基礎知識が事務職でどのように役立つのかについては詳しく記載されていません。
なぜなら、ITパスポートは事務職のために新設された資格というわけではないからです。
- ITパスポートはITの基礎知識があることを証明するもの。
- ITパスポートは事務職のための資格ではないが相性が良い。
しかし、後述しますが筆者の経験上ITパスポートは事務職のために作られたと言っても良いほど事務職として働く人と相性が良い資格です。
少し強調すると、会社という組織で働く環境において複数の人間のデータを頻繁に扱うような職種ではITパスポートで学ぶ知識と業務の内容はおのずと関わりを持つようになります。
ストラテジ系は事務職の基礎知識
まずストラテジ系の知識ですが、事務職として業務を遂行するうえで知らないと恥をかくレベルの知識が盛りだくさんです。
- 企業活動
- 法務
- ITリテラシー
企業活動・法務については事務職に限らず会社務めをする人は自社の理念を知っていることは当たり前ですし、それを対外的にアピールできなければ自社を宣伝することができません。
また、会社に属する以上は会社に利益に反することをしてはいけませんが、なにより社会的に許されることと許されないことの線引きを法律の観点から理解しておく必要があります。
それができない人はリテラシーが低く一般常識に欠けるとみなされても仕方ありません。
事務職は書類に頻繁に接する機会がありますが、紙媒体・電子媒体を問わず文章や画像データを記録する局面が多いですが、法的に許されない行為について著作権・肖像権も含めてきちんと理解しておく必要がありますが、ITパスポートで学ぶ基礎知識はこれらと深く関わりがあります。
経営戦略の話題に振り落とされない!
経営戦略抜きにして今後の一手を無闇に打っているようだと競争の激しい業界では生き抜くことはできません。
ITパスポートはストラテジ系の出題範囲に経営戦略という分野があるので、関連用語の意味や概念を理解することができます。
企業活動では競合を意識しながらも自社の強みを最大限に活かした戦略を立案・実施できてこそ企業はこの荒波を乗り越えることができるわけですが、事務職は経営戦略を立案するようなことを期待されません。
ただし、事務職は会社の経営者や幹部、もしくは担当部門の社員が立案した戦略について文書化した書類に頻繁に接する機会があります。
事務職は直接的に経営戦略を担当することはなくても、書類をとおして間接的に関係用語と触れ合う機会が多いので、ベンチマーク・PDCAサイクル・ABC分析など関連用語と接する機会が多いと言えます。
このような経営戦略にかかわる専門的な用語は書類にたくさん登場するだけでなく会議の席でも当たり前のように登場しますが、意味を理解していないと話について行けません。
また、自分が所属する組織がどういった理念を掲げ、売り上げを伸ばすためにどのような戦略を立て実行しようとしているのか、意味も分からず関わっているのと理解して関わっているのとでは大きく異なります。
ITパスポートではストラテジ系の出題範囲で経営戦略に限らず会社経営で必要になる基礎知識・予備知識について多く学べるので必ず役に立ちます。
事務職でITパスポートの知識が役に立つ事例を紹介
ITパスポートで学んだ知識が事務職に限らず会社勤めをする人にとって非常に役に立つことは分かりました。
ところで、事務職で働く人が技術的な面で役に立つ機会はあるのかというと、専門的ではありませんが役に立つ機会はあります。
ITパスポートが事務職として働く人にとってどう役立つのか、それは実際に事務職として働いた経験があれば良く分かります。
例えば、筆者は過去に事務職を経験したことがあり、職場でPCを使用して書類作成したり簡易なネットワークを構築したりした経験もありますが、それこそまさに基礎知識で対応しました。
Iパスの基礎知識を書類作成に活用
書類作成はマイクロソフトのWord、Excelを多用しましたが、Excelで関数を使わず書類を作成するのは無理ゲーだったので自分で勉強して関数を学びました。
ITパスポートではテクノロジ系の出題範囲にアルゴリズムとプログラミングという項目があり、そこでプログラミングについて理解を深めることはできませんが、プログラミングで何ができるのかイメージを掴むことはできるでしょう。
つまり、そこでプログラミングをマスターできなくても、それがどういう局面で活用できるのか知ることができるので、今後の発想の転換に影響します。
Excel関数にしろプログラミングにしろ、それができるできないという問題以前にそれで何ができるのかという事実を認識することで、問題に直面した時の選択は大きく変わります。
知っていればこそ活用しようと思えるのであって、知らなければ活用しようとさえ思わないからです。
ITパスポートで学べるのはその事実の部分です。
Iパスの基礎知識をもとに障害の切り分けを実践
また、ネットワークについても全くの素人だったのでネットや書籍で基礎知識を学んで対応しました。
ネットワークの障害は物理的なトラブルならPINGコマンドを使用するだけで簡易なネットワークならどこで断線しているか特定するのは簡単です。
あとはLANケーブルを買ってきて既存のものと取り換えるだけです。
ITパスポートではネットワークの知識についても簡単に学習しますが、セグメント単位でいくつのIPアドレスを登録できるかなど少々難しいことも学んだりしますが、IPアドレスという唯一無二の識別番号について理解することでネットワークの基礎に触れることができるとともに、職場で役に立つ局面もあります。
Iパスの基礎知識をもとに簡単なプログラミングを実践
関数だけでは解決できないプログラムが必要になり、自分でC言語を学んでプログラムを作成したこともありますが、それも書籍で基礎知識を学んで対応しました。
プログラミングといってもExcel上でのみ動作するVBAも立派なプログラムで、VBAを使いこなせればけっこう色々なことができます。
少し高度ですが、ネット上のサイトから必要な情報だけを抜き出してExcelシートに規則に従って一覧で表示させるスクレイピングという技もVBAで実現可能です。
これができれば情報の収集と整理という時間がかかって厄介な手作業をプログラミングで完結させることができます。
つまり、ITパスポートで問われる基礎知識とはITパスポートの出題範囲に指定されている各分野の詳細(中分類15項目)について理解を深めるための基礎知識を意味し、細かことまで深く理解していることを証明するものではありませんが、一歩踏み込んで理解を深めるためには必要不可欠な知識だと言えます。
ITの分野で何か特定の事柄について深く知るための第一歩というか、入口に入るための予備知識を身に付けることができるというのが一番正確な表現かもしれません。
公開データから見る事務職とITパスポートの親和性
以上、筆者の経験も交えてITパスポートが事務職に役立つ事例を紹介しましたが、ITパスポートと事務職の相性についてはIPAの公開データからその一端を垣間見ることができます。
ところで、事務職といっても世の中には色々な事務職が存在します。
下記は広義の事務職に該当しそうなものの一例です。
- 弁護士事務所
- 税理士事務所
- 公認会計士事務所
- 地方公共団体
- 建設会社の建築事務所
- 賃貸住宅の斡旋業者
- 企業の経理担当者
- 企業の総務部門
- 企業の総合職
- 企業の広報部門
- 社会福祉法人の事務所
弁護士事務所や税理士事務所のように特定の分野に特化した事務職もあるでしょうし、製造業に代表されるメーカーの事務所で総務にあたる部門もどちらかと言えば事務職です。
また、賃貸住宅の斡旋をする会社で契約の手続をする仕事も事務職ですし、福祉施設で勤怠管理をしたり請求業務をする仕事も事務職です。
それではIPAの公開情報に掲載されている事務職がどういう種類のものかというと、残念ながらIPAにはITパスポートの受験者と合格率の結果を勤務先別で一覧にしたデータはありますが、どの業務が事務職に該当するのかまでは明記されていません。
そこで、筆者の個人的な見解も交えておおかた事務職に該当するか事務職に近いと考えられる業務をピックアップして、そうでないものと比べてみようと思います。
下記はIPA公式サイトから引用したR5年度のITパスポート受験者の業務別一覧です。
まず、上表の勤務先一覧から椅子に座って書類と向き合う可能性の高そうな業務を選択してみます。
- 情報処理・提供サービス業
- 製造業
- 金融・保険業、不動産業
この3つの勤務先は上表の中で受験者数・合格率ともに他を圧倒して高い数字が目立ちます。
- 情報処理・提供サービス業
まず、情報処理・提供サービス業ですが、現業もあることはありますが基本的にPCか顧客と向き合うデスクワークだと考えられるため、とりあえず事務所に分類できそうです。 - 製造業
次に製造業ですが、製造業界における従事者の数は現業がメインになるはずですが、恐らくITパスポートの受験者に占める現業職従事者の比率は極めて少ないと考えられます。
つまり、この表における製造業の受験者数・合格率の数字は製造業界でオフィスワークに従事する人のものだと推測されます。 - 金融・保険業、不動産業
最後に金融・保険業、不動産業ですが、これは典型的なオフィスワークとなります。銀行・証券会社・保険会社・不動産会社、これらの業界で事務的な業務と無関係であることは不可能です。
つまり、事務職かそれに準ずる業務種別としてこれら3つを比較対象に選んで間違いないと考えられます。
下表は上表の右端の列から該当する3職種の受験者数・合格者数の年間平均値を抜粋したものです。
受験者数(平均) | 合格率(平均) | |
情報処理・提供サービス業 | 4,082人 | 90.1% |
製造業 | 5,672人 | 91.6% |
金融・保険業、不動産業 | 4,264人 | 87.4% |
この3職種は受験者の数が極端に多いだけでなく合格率も最低でも87.4%に至ることから、ITパスポートの受験に向けて積極的に取り組んだ人達か、取得すると業務で役に立つので必死で取得した人達である可能性が高いです。
そうでないと、上表にある他の勤務先と比べてこれら3つの勤務先の受験者が極端に多いことや合格率が極めて高い理由について納得のいく理由が見当たりません。
少々個人的な先入観も入ってしまいますが、これら3職種に従事する受験者層の人は今の仕事内容とITパスポートで得られるであろう知見がかなり親和性が高く、取得するメリットが大きいと考えて受験しているのではないでしょうか。
そうでないと、これらの数字の背景にある志望動機や合格率について説得力のある根拠を提示するのは難しい気がします。
つまり、事務職を筆頭に事務方の仕事している人の業務内容はITパスポートで得られる知見と親和性が高いと言えそうです。
まとめ
以上、ITパスポートがIPAでどう定義されているかについて認識を共有するとともに、ITパスポートの出題範囲に基づいて、それが企業活動でどう活かされるか事務職の立場を中心に解説しました。
また、筆者の事務職の経験を題材にして実際にITパスポートで得られる知見が事務職の職場でどうゆうふうに役立ったか具体例も紹介しました。
そして最後にIPAの公開データを参照し、受験者の勤務先によってITパスポートの受験者数と合格率が大幅に異なることや、事務職か事務職に近い職域と考えらえる勤務先の受験者層ほど受験者数・合格率ともにかなり大きな数字になることを示しました。
筆者の個人的な見解もそうですが、なによりも公開データから読み取れる事実は信憑性が高いため、ITパスポート受験者の属性を調べるうえで貴重な判断材料となることは間違いありません。
最後にこれら一連の考察がこれからITパスポートを受験しようと考える人にとってプラスに働いてくれると幸いです。
なお、これからITパスポートを目指そうと考えておられるかたで勉強方法が分からなかったり、独学ではどうしても難しいという場合は、ITパスポート【通信講座】比較9選!おすすめは質問に答えてくれる講座! を参考に通信講座で学習を進めるのも良いでしょう。
人にもよりますが、テクノロジ系の問題がどうしても理解できないなど理解度はケースバイケースです。
質問にメールで回答してもらえるサポート体制の整った通信講座なら、分からない箇所を放置せず着実に理解を進められるのでおすすめです。
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