Netflix『地獄が呼んでいる』が話題になってますね。イカゲームに続き韓国のオリジナルドラマが大ヒットするという現象が続いているようです。全話視聴してみましたがデスノートやリングのパクリと思われる展開が気になります。でもパクリ方が上手だし訴えるテーマや主題が全く異なる点は評価に値するし面白かったです。
『地獄が呼んでいる』は全6話で、2021年11月にNetflixで独占配信が開始しました。他の動画視聴サービスでの視聴は現時点では不可能です。
「地獄が呼んでいる」のストーリー概要
ある日、目の前に天使(霧のような予言者)が突然現れて「○○、お前は○日後○時に死ぬ」と死亡予告された人が、予告された日にゴーレムかゴリラみたいな怪物が現れてボコボコに殴られて本当に死んでしまうという事件が起きます。
しかも、多くの人が見ている聴衆の面前でもお構いなく死刑執行人のゴーレムが現れるので、予言を受けた人は必至で逃げ回りますが、ゴーレムの人知を超えたパワーで圧倒されて殺されてしまいです。(厳密にはパンチされてマル焦げの骨みたいになります)
この怪奇現象をどう捉えるかが物語のメインテーマになっていて、ある人は天罰として捉え、またある人はなにかしらの原因があるはずで阻止することが可能だと考えます。
そのうち、この現象がメディアでも取り上げられるようになり、予言を受けた人が宣告を受けた当日にどうなるか撮影するという、とんでもない事態に発展していきます。
そして、予言と予言の実行の捉え方の違いにより新真理会・矢じり・警察などがそれぞれの考えに基づいて行動を開始します。
新興宗教・新真理会
指導者のギンスを中心とするカルト集団で、予言者や予言の実行者を神のお告げとして捉えており、天使の予言を受けて死を待つ人を公の場に晒しだし、予言の実行者が本人を殺す様子を公開することで本人に贖罪する機会を与えていると本気で考えています。
本人が死ぬ間際に「あなたの罪を告白しなさい」と、やってもいない罪を白状させようと誘導する様子は、罪のない人に濡れ絹を着せるような気違いじみた行為で、本人たちはそうすることで死ぬ人も救われると信じています。
新真理会の指導者ギンスの生い立ちは暗く、生きる意味を見失った20歳の時にチベットを旅した時、たまたま予言の実行者の処刑現場を見てしまったことが現在の行動に繋がっています。
実はこの時、ギンスは予言の意味をおおかた理解していたことが後から分かります。今は敢えて違う解釈をしたふりをして行動しているのです。
後に指導者や行動理念が少しずつズレていき、自分たちの利害だけを目的とするちんけな組織に成り下がることになります。
無法集団・矢じり
「矢じり」の名前の由来は神が放った矢の矢じりという意味で、神が放った矢が何を意味するのかを自分たちの都合の良い方向へ誤認というか悪用しているようです。
根本的な考え方は新真理会と同じですが、リーダーがネットの住人として正体を現さない無責任な存在で、責任の所在をハッキリさせることのできない厄介な存在です。新真理会の取り巻きというか悪い意味で追従するものたちです。
矢じりのリーダーと構成員の関係は、現代のSNSが生み出した悪意の産物と言っても過言ではありません。そもそもリーダー自身がネットでの収益アップが目当てでやってる可能性もあり、追従する者たちも知らないうちにそのファンみたいな存在になり変わっています。
予言を実行されるのは悪い行いをしているためという理由で予言を受けた人の家族を晒しものにしたり、新真理会を批判した人間をリンチするなど法に触れる行為も厭わない過激集団です。
「恐怖だけが人を悔い改めさせる」という考え方が基本となっていて、構成員は無意識のうちに自分たちの暴力も正当であると誤認させられています。
ちなみに、ネットでしか姿を現さない矢じりの指導者は、昔テレビゲームが流行った時代にSNKで発売されて大ヒットしたワールドヒーローズ2に出てくるマッドマンにそっくりです。
人が作った法律で正義をなせると思うか?
これは新真理会の根本的な理念であり、予言の実行を殺人事件として捜査するギョンフン刑事が、捜査の過程で新真理会と矢じりの過激な行為を取り締まるさなか、過去に自分の妻を殺した犯人が死刑にならず、たったの6年で出所したことに対し心に抱く疑念です。
また、これは新真理会のジンス議長が世間に問いかけているメッセージでもあり彼自身の答えでもあります。ジンス議長は自分が経験した予言による宣告の恐怖を多くの人に味わって欲しいという曲がった願望を持っており、法律で正義をなせなくても恐怖で人を正しく導くことができると確信しています。
一方、ギョンフン刑事は本心では自制心で自分を律することこそが人間本来の正しい在り方だという考えを持っているため、ジンス議長の信念と現実の狭間に立たされ最後まで葛藤し続けます。
デスノートとの共通点
冒頭でも触れましたが、Netflixが独占配信するイカゲームがパクリ疑惑で炎上したのと同様、今回もパクリ疑惑は少なからず出てきそうです。まず、第一に上がられるのがデスノートパクリ疑惑です。
怪奇現象を目の当たりにした人間が、それを神の力であると信じて神を崇め、神の意思にそぐわない行動をとることが大事だと主張し、それを組織だって宣揚する様子はまさにデスノートのキラを崇める新興宗教団体そのものです。
また、デスノートでは夜神月(やがみらいと)が凶悪な犯罪者を中心に死刑執行を繰り返した結果、それが抑止力となり犯罪発生率の低下に繋がりましたが、「地獄が呼んでいる」でも予言者の存在を悪に対する戒めだと捉え、その防止策として罪人をつるし上げる点はやり方こそ異なりますが、着眼点は全く同じだと言えます。
元ネタがアニメなので映画・ドラマファンの中には気付きにくい人も多いかもしれませんが、新興宗教の新真理会や矢じりのような存在が世間で幅を利かせるようになる背景に人知を超えた力が存在し、それを神の意思だと一方的に妄信して人々を扇動する姿は、人間の本質的な罪悪感を狙い撃ちした上手な手法だと言えます。
デスノートとの相違点
最初から夜神月(やがみらいと)が犯人であることがはっきりしているデスノートと予言者や予言の実行者の正体がよく分からない「地獄が読んでいる」とでは、犯人像というか原因がわからない点が全く異なります。
ただし、このミステリアスな手法は後で紹介するLOSTのジェイコブの存在をモチーフにしていることがよく分かります。LOSTではジェイコブの謎を知りたいという視聴者の存在が長編シリーズの大ヒットに繋がったことは間違いありません。
最初から正体がハッキリしていたら、よほど趣向を凝らさない限り視聴者の注意を奪い続けることは難しいでしょう。その点、予言者や予言の実行者の正体がわからないのは好都合だと言えます。
リングとの共通点
日本ではお馴染みのリングですが、呪いのビデオを観て貞子が井戸から出てくるシーンを見てしまった人は7日後に必ず死ぬという、非常にシンプルなホラー作品です。
死亡宣告の方法が異なるだけで、「地獄が呼んでいる」はリングの死亡宣告から着想をえているのは間違いなさそうです。また、一度死亡宣告を受けたら基本的に自分の死を取り消すことが出来ない点もそっくりです。
この辺の切り口はリングだけではなく、同じ系列の「着信アリ」からも着想を得ていることが予想されます。「着信アリ」も一度わけのわからないメールを着信しただけで、わざわざ台湾まで逃げても助からないという、ファイナル・デッドコースターなみの死亡フラグが確定する作品です。
リングとの相違点
どうやっても死ぬという事実を取り消せないのは、どちらかと言うと「地獄が呼んでいる」のほうが強制力が強いみたいです。リングでは7日以内に誰かに呪いのビデオを貸してビデオを再生させることができれば、貸した本人は助かるという方法が残されていました。
ところが「地獄が呼んでいる」では過去に罪を犯しているか否かに関わらず、天使に予告されると100%死ぬことが確定します。
また、リングではなんとか助かろうとして貞子の出生の謎を調べたり色々と手を尽くしますが、「地獄が呼んでいる」では近いうちに死ぬことを自覚した人間がどういう行動をとるのかに注目して描かれます。
これは、ある意味で究極の選択を迫る「SAW」から着想を得ているとも言えそうです。ただ、「SAW」ほど残酷な選択を迫るわけでもなく、人としての良識やモラルが問われる選択である点は異なります。
そのため、自分が助かるために仲間を惨殺するというような、短絡的な二者択一を迫るシーンがないのは称賛に値します。
LOST(ロスト)からも上手にパクっている
ただ、予言者にしても予言の実行者にしても、霧状で灰色っぽくて黒い塊をイメージさせる手法は昔アメリカで作成された「LOST」(ロスト) にかなり似ているのは間違いありません。
「LOST」でも黒い煙が現れて人をさらって殺してしまう、神の摂理もしくは掃除屋みたいな不死身で強力な力をもった存在があって、ジェイコブと黒い煙の正体が何者なのかが物語のテーマのひとつでした。
最後まで観ても黒い煙がなにを意味しているのか分からなかった人が多かったようですが。「地獄が呼んでいる」に登場するゴーレムもジェイコブと同じように姿や形を変えられる何かの象徴のような存在なのかもしれません。
正体がハッキリしないけれど、人の力では抗えない節理のような存在、または理(ことわり)を表現しているように見せている点は、LOSTを知っている者からすれば、かなり大きな影響を受けているように感じます。
『地獄が呼んでいる』の独自性とは
ここまで色々とオマージュとかパクリとかマイナス視点で述べてきましたが、別にそれを否定するわけではありません。純粋に感想を述べているだけです。
さらに純粋な感想を述べるとすれば、予言の実行者のゴーレムが強すぎるのは他の作品の追随を許さないものがあると思います。
実際、こういうゴーレムみたいな形のある存在には弱点のようなものがあっても良いのですが、この作品ではゴーレムがゴリラのように強くて絶対に倒せないどころか、走るのも早いという反則技を繰り広げます。
また、走行中の車の前にまで現れるという、「ジョジョの奇妙な冒険」第5部に出てくる「死を予告する岩」みたいにしつこいのは良かったです。
ジョジョに出てくる岩も「死」が確定した人にしか現れないモノで、触れることで楽に死ぬことができるという存在でしたが、岩を破壊することで死ぬ時期を多少遅らせたり死に方を変える可能性が残されていました。
しかし、「地獄が呼んでいる」のゴーレムは天下無双の化物で敵なしである点、他の作品とは異なるオリジナルと言えそうです。不死身度だけ見れば、ベルセルクのゴッドハンド並みですね。
また、「地獄が呼んでいる」では人が自分の死を確信して、いつ死ぬかがはっきりした時にどんな行動をとるのかという、普遍的とは言えない突拍子もない問いかけをしている点は最初から最後まで一貫しています。
そもそも、人はいつ死ぬか分からないからあれこれ考えたり悩んだりするわけであって、いつ死ぬか分かったらもう努力もしないのではないでしょうか?
でも、死ぬのが半年後とか1年後とか中途半端だと、なんとかして防ぐ方法がないか考えてしまいそうです。そういうあり得ない話だから逆に面白いのかもしれません。
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