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ヴィンランド・サガ【アニメ版】がひどい内容だという噂の真相

ビンランドサガ・あらすじ アニメ・漫画・ドラマ

ヴィンランド・サガのアニメ版は内容がひどいと聞いていましたがプライムビデオで視聴したところ評判は全然あてにならないどころかメチャクチャ面白かったです。1期と2期でかなりイメージが変わってつまらなくなったという批判的な声も聞きますが本質的なテーマは同じです。最近の漫画・アニメはけこう手が込んでいるというか品質が高いと感じます。

ヴィンランド・サガのような作品は単なる戦闘シーンを楽しむだけの作品ではなく、主人公の生き方や気付きに共感できた時に本当の良さが分かるような気がします。ヴィンランド・サガはある意味で特殊な作品だと思います。

こういう作品と似たようなものは今までに見たことがないので、漫画・アニメの領域を越えた部分があって感動しました。

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戦争を通じて人間の本質を露骨に表現した作品

ヴィンランド・サガはアニメ版が第1期と第2期に分かれていますが、1期は最初から最後まで戦争まみれの世界が描かれ、殺戮と略奪という戦争の最も悲惨な現実が露骨に描かれます。

これに関しては、ヴィンランド・サガでクズの蛮行が描かれるシーンを事例別に解説でより掘り下げて解説しています。

主人公のトルフィンは英雄トールズの息子として誇り高く生きることを父から教わりますが、父は謀略によって 罠にハマり殺されてしまいます。

トルフィンは父親の仇を討つため、父を殺したアシェラッドというバイキングの首領につきまとい、なんと11年もアシェラッドと行動をともにすることになります。

アシェラッドとともに戦場へ行き、アシェラッドの命令で多くの人の命を奪い、アシェラッドたちともに略奪の限りを尽くすのです。

トルフィンは戦場で手柄を立てるたびに褒美としてアシェラッドに決闘を申し込めるという条件につられ、アシェラッドの言うことならなんでも聞く戦死(戦闘マシーンみたい)として戦い続け、何度も決闘を申込みますがその都度コテンパにやられてしまいます。

結局、怒りで冷静さを失いやすいトルフィンは戦場では有望な戦死ですが、決闘では狡猾なアシェラッドに全く歯が立たず最後まで勝つことができませんでした。

アシェラッドを決闘で倒すためにアシェラにつきまとっていたトルフィンでしたが、肝心のアシェラッドは結局デンマーク王との駆け引きに負けて自滅の道を歩みます。

アシェラッドが死んだことで生きる目的を失ったトルフィンは、デンマーク王の息子クヌートの計らいで処刑されずに済みますが、奴隷としてデンマーク南部のケティル農場へ送られてしまいます。

アシェラッドは祖国を守るために戦っていた

ヴィンランドサガは当初トルフィンとアシェラッドのやり取りが中心に描かれるので、単なる仇討ストーリーみたいに勘違いする人が多いと思いますが、それは本質的なテーマではありません。

トルフィンの宿敵であるアシェラッドは実はイングランドにある小国の血筋に当たる人物で、デンマークのバイキングがイングランドや周辺の小国に勢力を伸ばして祖国を滅ぼすことを最も恐れていました。

バイキングによって奴隷としてデンマークに連れて行かれた母のもとで育ったアシェラッドは、母を妾にして権力を振るっていたバイキングの父親を殺害して復讐を果たし、その後は身分を隠して大嫌いなバイキングの首領になり、バイキングとしての地位を確立していきます。

最終的にはデンマーク王が自分の祖国を制服しようとしている計画を阻止しようとして、祖国とクヌート王子のどちらを助けるか究極の選択を迫られ窮地に立たされます。

この時アシェラッドは祖国もクヌート王子もどちらも救う道を選択しましたが、それはとりもなおさず自分だけがが確実に殺される道でもありました。

アシェラッドの生き方はバイキングとしては残虐極まりないと言えますが、祖国を思う一人の戦士として崇高だと言えます。

ただし、アシェラッドが目的を果たすために採った行動のなかにはトルフィンの父トールズを罠にはめて殺すことも含まれており、トルフィンにとっては非道な男であり死に値する相手としか映りません。

ヴィンランドサガにおけるトルフィンとアシェラッドの矛盾はこの物語の底を流れる大きなテーマと深く関わりがあると言えます。

それはアシェラッドが生前に口にしたセリフや死ぬ間際トルフィンに言った言葉からも読み取れます。

「人はみんな何かの奴隷なんだ」

「お前、この先いったいどうやって生きていくんだ?いい加減、こんな小さなところに引っ掛かってないで先に進めよ。英雄トールズの息子よ・・・」

アシェラッドの言葉通りだとすれば、アシェラッドは祖国を思う心の奴隷だったということでしょうか?

祖国をデンマークから守るためならどんな手段も選ばなかったわけですから。

アシェラッドの祖国を思う心については、アシェラッド兵団で最古参のビョルンが、最後はアシェラッドに決闘を申し込んで死ぬというエピソードからも伺うことができます。

アシェラッドとビョルンの決闘については、アシェラッドがビョルンと決闘した理由は友達になりたかったからで詳しく解説しています。

自分という小さな我に支配されていたトルフィン

アシェラッドが祖国を思う愛国の奴隷だったとすればトルフィンは父親の仇という個人的な感情に振り回される奴隷だと言えます。

トルフィンはまだ幼く物事の分別もつかない頃に目の前で英雄と崇められる父を誅殺されたことで仇であるアシェラッドに深い憎しみを抱きますが、その背景にある政治的な事情までは当然理解していませんし、教えて分かるわけでもありませんでした。

しかし、仇を討つためとは言えアシェラッドが常に自分を殺さず同行させていたことや、決闘に負けてもトドメを刺さなかったことについては青年になってからも頭に血が上って理解できません。

それどころかトルフィンは最後の最後までアシェラッドと決闘するための条件だと言われればどんな命令も実行する野蛮な戦死だったと言えます。

果たして、愛国の戦士であるアシェラッドと父の仇討を誓う戦死トルフィンはどちらが格上なのか?

答えを決めるのは人それぞれだとも言えますし、答えなどないとも言えます。

ただし、最初から最後まで自分を制御しながら戦ったのはアシェラッドのほうで、途中で自分を見失うのはトルフィンのほうです。

アシェラッドが死ぬまでのヴィンランドサガにおいては、本質的にどちらが奴隷かというとやはりトルフィンのほうだと感じます。

そして、トルフィンは文字通り本物の奴隷の身分に落ちてケティル農場で苦役を強いられることになります。

なお、アシェラッドについては読者や視聴者の間で評価が分かれますがヴィン ランド・サガ~アシェラッドの魅力とトルフィンに纏わりつく亡霊癖筆者なりにアシェラッドの魅力について解説しています。

奴隷でありながら人間性を失わないエイナルとの違い

アニメ動画版では2期からトルフィンが奴隷として送られたケティル農場での生活が描かれますが、視聴者のなかには戦闘シーンや戦場が描かれない2期について、1期と違って全然面白くないとか内容がヒドイと酷評する人もいるようです。

ヴィンランドサガのアニメ2期はケティル農場というデンマーク南部の農村で地主のケティルのもとで奴隷労働をしているトルフィンの姿が描かれます。

ある日、トルフィンの働く農場にエイナルという奴隷が新たに連れてこられますが、農夫出身だったエイナルは畑を耕すのが得意で、トルフィンに畑を作物を育てることの喜びを教えます。

エイナルはもともとイングランド出身で、村をバイキングに襲撃されて家族を皆殺しにされたうえ奴隷として船でデンマークへ連れてこられたのですが、奴隷になっても腐らない心根が真っすぐな青年です。

トルフィンと初めて出会ったエイナルはトルフィンの過去など一切知らないので、生きる屍となり無表情で意思を持たないトルフィンを見て元気のない奴だと感じます。

エイナルには奴隷だから奴隷らしく振舞うという考えがなく、旦那(主人)であるケティルに見込まれて自分の力で自分を買い戻さないかと、森を切り開いて畑を開梱し、麦を育てて売ったお金で自由身分になることを提案されます。

農作業について全く知識のないトルフィンは畑についてエイナルから全てを教わり、初めて麦が芽を出したのを見て、こんなか弱いものが麦になるのかと驚きます。

やがて3年以上の月日が経ち2人で力を合わせて森を切り開いた結果、ケティルは2人の頑張りを認め予定よりも少し前倒しで奴隷身分から解放することを約束します。

ようやく奴隷から解放されることを目前にした2人でしたがエイナルとトルフィンの頭の中は別々で、エイナルは故郷に帰っても家族は皆死んでいないしどうしようかと考えます。また、雇われ人としてケティルのもとで働かないかとの誘いもあったので、それも悪くないかもと考えます。

一方、トルフィンはもともと生きる目的を失ったカラッボの男だったので、どうしたら良いのか全く思い浮かばず、とりあえず故郷のアイスランドへ帰ろうかと考えます。

2人はケティルがデンマーク王に農作物を献上しに行き返ってくるのを待ちますが、実はデンマークは戦費が足りず疲弊しており、ケティルの農場はデンマークのクヌートの謀略で接収されようとしていました。

この後、主人であるケティルも奴隷であるトルフィンとエイナルもともに新たな道を歩むことになりますが、ヴィンランドサガ2期ではケティル農場で2人が奴隷身分を買い戻そうとして農作業に励む姿で大部分の時間が使われます。

そして、奴隷に堕ちても農夫として畑を愛し畑仕事で手を抜かないエイナルと、敵を作らないよう逆らわないよう小さく振舞うトルフィンが対照的に描かれます。

ところが、エイナルの人間性は心が死んだトルフィンに命を吹き込み、トルフィンの心にも子供の頃に知ることのなかった新たな人間性の萌芽が芽生え始めるのです。

それにはエイナルだけでなくケティルのように良心的な旦那の存在があったことや、ケティルの父である大旦那のスヴェルケルの存在も無視できません。

スヴェルケルは心が空っぽのトルフィンに対して、「空っぽなら、なんでも入るじゃろ。働け」と言い、目の前の仕事に打ち込むようはっぱをかけ、トルフィンは次第に人間性を取り戻していきます。

『ビンランド・サガ』がヒドイという声について

ヴィンランド・サガはデンマーク王国のデーン人がイングランドをはじめ北欧を武力で制服していくシーンが露骨に描かれます。

侵略・略奪という戦争の悲惨さがそのまま描かれるので、時には見ていられないほどヒドイと感じるシーンもふくまれるため、Twitter上の口コミではそういった視点で『ヒドイ』という単語を含めたツイートが割と多くみられるのは事実です。

ただし、Twitterの口コミは作品そのものを酷評するものではなく、批判的な意見は検索エンジンの検索結果に多いようです。

具体的にはトルフィンが仇討のためと言いながらいつまでもアシェラッドと行動をともにして、同じように蛮行を繰り返すことに対する批判的な意見や、アニメ2期でデンマークのケティル農場ばかりが描かれて1期で見られたトルフィンの戦闘シーンが全く見られない点に不満を感じる声が多いようです。

下記はTwitterに上がっている奴隷身分に対する行為が『ひどい』という趣旨の口コミです。

アニメ2期は進展に時間かけすぎかも

ところで、現在進行形でアニメ版を視聴している筆者の感想としては、作品は素晴らしいけれど進展に時間がかかり過ぎてヒドイと感じる節はあります。

1期はある程度リズミカルに物語が進展していきますが、2期はひとつのエピソードで何話も時間をかけるので、アルネイズさんの御主人が奴隷から逃げようとして脱走するエピソードもかなり長いです。

この時点ですでにクヌート王が100名の兵団をケティル農場へ差し向けているはずなので、時間稼ぎしないとデンマーク兵とケティル農場の闘いに一気に場面が映ってしまうのを危惧しているのでしょうか?

それにしても、ちょっと長すぎてダラダラした感じになっている点は否めません。

アルネイズさんとガルザルの結末がひどすぎる

ところで、アルネイズさんの夫のガルザルが奴隷の身分に耐え切れず主人を殺害して脱走するエピソードはけっこう残酷です。

ガルザルが奴隷としてひどい仕打ちを受けていたこともそうですが、実はお互い馬を走らせてほんの少しのところにいたにも関わらず、2人ともそれを知らされることもなく奴隷の身分に甘んじるしかなかったのです。

そして、ケティルの寵愛を受けて酷使されることを免れていたアルネイズさんはガルザルが生きていたことを知り驚愕します。

そして、捕まったガルザルの縄を解き逃がしてしまうという大失態を犯してしまい、大旦那様とトルフィン、エイナルの助けを借りて2人で農場から脱出しようとしますが、ガルザルは出血多量でこの世を去ってしまいます。

アルネイズさんはガルザルの傷が重傷でもう持たないことを知りながら、最後くらいは奴隷ではなく人として終わりを迎えさせてあげたかったのかもしれません。

当然、後で捕まって処罰を受ける覚悟もしていたのでしょうが、それにしてもこのエピソードは残酷過ぎます。

同じ人間がここまで惨めで残酷な仕打ちを受けた挙句に不運な最後を迎えるなんて、残酷でヒドイと言えばヒド過ぎます。

アルネイズさんとガルザルのエピソードについては、【ヴィンランド・サガ】アルネイズさんは何を願っていたのか?でより詳しく解説していますが、アルネイズさんから生きる希望を奪った諸悪の根源は戦争という名の魔性であることが分かります。

まとめ

筆者の個人的な感想としてはヴィンランド・サガのアニメ版は決してひどいものではありません。それどころか、かなりの傑作だと言っても良いでしょう。

ヴィンランド・サガで描かれるテーマというのは人間性の復権というか、戦争という悲惨な現実のなかでも人は希望を持って生きていけることを描こうとしているので、実は戦場ありきの作品ではないと思うのです。

時代が時代なのでバイキングの戦士団やデンマークがイングランドを侵略するエピソードなど多くの戦闘シーンが描かれますが、本質はそこではないようです。

1期もそうですが、同じ古代戦記系の漫画・アニメでNHKで放送されているキングダムという作品がありますが、キングダムでは露骨な殺戮や略奪シーンは描かないようかなり配慮されているのに対してヴィンランド・サガでは戦争という現実がありのまま描かれます。

戦争が起きる理由や征服者が得るもの、負けた者たちがどういう目に遭うか、全てを露骨に描いたうえで判断は読者に任せたりせず、そういう現実のなかで人がどんな希望を持つのか、どう生きるかを描いています。

また、人の在り方を奴隷という究極の立場で描くことで表現しているのはかなり見事です。

1期~2期を通してトルフィンは戦士から奴隷に身を堕としますが、そもそもトルフィンは農夫としての奴隷になる前からすでに自分の心の奴隷だったことが良く分かります。

そういう意味では1期と2期は描かれ方が異なりますが、根底を流れるテーマは全く同じであることに気付かされます。

トルフィンは夢の中で地獄の亡者たちを傍観するアシェラッドと再会し、「お前は運がいい。うつつになったことで助かった」と言われ、自分の犯した過ちや過去を全部引きずりながら前へ進むよう促がされます。

この夢を見た時点でトルフィンにとってアシェラッドはすでに一方的な仇ではなく、厳しくも心優しい父であり先輩に変わっています。トルフィンが気付いていないだけで現実は最初から最後までそうだったのですが。

トルフィンが真に自分の心を開放して奴隷でなくなる日が来たらヴィンランド・サガの物語は終わるのでしょう。

なお、ヴィンランド・サガがヒドイと言われる理由には歴史的に実在した人物がたくさん登場するわりに史実にはない作者のオリジナルな展開が含まれている点なども指摘されたりしますが、ヴィンランド・サガが史実とどれくらい異なるのかについてはヴィンランド・サガは実話?史実に基づいて検証したらほぼフィクションだったで詳しく解説しています。

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