主人公のはながきたけみちが何度タイムリープして過去を塗り替えても、戻った未来では必ずきさきてったが頂点に立つ世界に逆戻りするのはかなり謎。最初はその理由ばかり考えてしまう武道や我々視聴者でしたが、単行本では最後に理由がハッキリします。そもそも人の執念に善とか悪とかあるのかな?と何気に考えさせられた作品でした。
結論から言うと、東京リベンジャーズは個人の執念と執念の対決の物語です。その執念が正しいかどうかは別として、執念に基づいてとった行動の善悪は別問題という話です。
この物語は最初はマイキーとかドラケンとか喧嘩が強くて人望もある東京卍会の構成員に注意が行ってしまいますが、物語の中心を通る本当の文脈が実は違うところにあったというのが面白かったです。
東京リベンジャーズのストーリは単純
主人公の花垣武道(はながきたけみち)はフリーターでレンタルDVDのアルバイト店員をしている自分にウンザリしていました。
そんなある日、中学時代の彼女だった橘日向(たちばな ひなた)【愛称がヒナ】が、東京卍会の抗争に巻き込まれて死亡したことをテレビのニュースで知り驚きます。その段階では武道はヒナの名前する忘れていたぐらい、現実に埋もれていたようです。
その後、駅で電車を待っている時に誤ってプラットフォームから転落し、電車に轢かれて死ぬ直前に脳裏に浮かんだのがヒナのことだったのです。
その後、突然過去にタイムリープしてしまった武道は未来で起きた現実をヒナの弟である少年時代の橘直人(たちばな なおと)に教えます。そして、未来を変えるのに協力して欲しいと握手の手を差し出した直後に未来へ戻り、そこでタイムリープの発動条件を知ることになるのです。
そして、未来で警察官となった直人と協力し何度も何度もタイムリープを繰り返し、過去を塗り替えるけれども、塗り替えたはずなのにヒナが死ぬという未来だけ変えることができません。
簡単に説明すると、東京リベンジャーズは花垣武道が自分の理想通りの現実を作りたいという願望を、貪欲にそのまま実行した物語というわけです。
全部見れば分かりますがすが、ストーリー展開のキーとなる存在として東京卍会という暴走族が反社会勢力に発展した組織があり、東京卍会の構成員やその頂点に立つことが当時の不良の間で何を意味したのかが物語のカギとなっています。
もっと砕いて説明すると、東京卍会・マイキー・稀咲哲太・花垣武道・橘日向、この5人が主要なキーマンとして物語が成り立っている単純な構成です。
ヒナの死を受け止めきれない武道
そもそも、東京リベンジャーズで武道がタイムリープしてまで現実を変えたいと思うようになったきっかけは、大切にできなかった中学時代の彼女だったヒナが、2017年7月1日、東京卍会の構成員に殺されたことです。
ヒナの弟である直人が警視庁の刑事として事件を捜査しており、その直人と握手することで過去へタイムリープできるという発想は、ありきたりだけれど何故か受け入れられるのが不思議です。
そして、何度タイムリープしても稀咲が東京の裏社会で頂点に立って暗躍しているという現実が変わらず、ヒナを救うことができないもどかしさは見ている視聴者を次の展開へ急き立てるものがあります。
もしも物語も途中でヒナの命だけは救うことができて、ドラケンが死刑囚になってたり、東京卍会がない代わりに天竺があったり、天竺のボスが稀咲だったりすることがどうでも良いのなら、この時点で面白味が亡くなります。
ところが、武道のヒナだけはなんとしても救いたいという凄まじい執念が、ルール違反とも言えるタイムリープを何度も実行させることを許している点は、武道が卑怯な手段を使っているという事実を視聴者に忘れさせる力があります。
ヒナの死を受け止めきれない武道の心は、ヒナが殺されるという現実そのものを否定して、それをなかったことにする行動へ走らせていますが、実はこれは正反対の行動をとっている稀咲と比べるとどちらが正しいか疑問符の付く問題でもあります。
武道は正義のヒーローで稀咲は悪のヒロイン
作者である和久井健がそこまで考えて描いたかどうかは実際に聞いて見ないと分かりませんが、武道が何度タイムリープしても、未来では必ず過去に排除したはずの稀咲が頂点に立っているという驚きの展開になりますが、武道は稀咲もタイムリープしてるのではと疑い始めます。
この考えは実はただの思い込みで、物語のクライマックスで稀咲が武道に追い詰められ際に武道に対して言った言葉が明確な答えになっています。
「お前…まだ俺がタイムリーパーだと思ってんのか?」
このセリフが稀咲の最後の言葉になるのですが、物語がクライマックスに近づくころには、なぜヒナが死ぬことになる未来が変えられないのか、なぜ稀咲が頂点に立つ未来になってしまうのか、その答えが徐々に分かってきます。
稀咲は東京リベンジャーズの最初から最後まで、喧嘩は強くないけど人を陰から上手に操り、組織をコントロールして最終的には自分がトップにいられるような仕組みを作る天才です。世間ではこういうのを悪とかクズと呼びますし、私も普通に嫌いなキャラです。
ただし、「中途半端な悪じゃない」のが稀咲の凄いところで、だからこそ稀咲を排除しようとする武道の姿は視聴者に正義のヒーローを感じさせるのですが、実はタイムリープという反則技を繰り返す武道と裏技無しでトップに立てる稀咲ではとちらが凄いのでしょうか?
単純に考えて稀咲のほうが凄いに決まってます。どうやっても倒せない悪の親玉ではありますが、たったひとつのシンプルで純粋な思いを原動力にして稀咲は東京卍会のトップに何度でも登りつめるのですから。
稀咲が武道のタイムリープという裏技をものともせず自分に有利な未来を作ることができた理由をケンシロウに言わせると、
「きさまの奥義をやぶったのは怒り、執念にまさるおれの怒りだ!」
とはならないですね。
そういえばシンが最初にケンシロウに言ったセリフはたしか、
「お前と俺の間には致命的な違いがある。それは、執念だ…。ケンシロウ、お前には執念がない」
稀咲哲太が何度でも這い上がる理由
稀咲が東京卍会や天竺のトップに立ってまでやりたかったことが、子供の頃に塾で一緒のクラスだったヒナに自分を振り向かせたかったからというのは、とんでもなく幼稚な発想です。
そして、告白したけどフラれたから殺したというのは、もはや弁解の余地もないほどゲスでクズのすることです。「ジョジョの奇妙な冒険」のディオもクズで有名ですが、ディオでもここまでやらないでしょう。
そもそも稀咲は神童と呼ばれるほどの天才で学力に関しては誰も敵わないほどの能力の持ち主でしたが、本当に欲しいものを手に入れることの意味や方法を知らずに育った人間なのです。
だからこそ、ヒナが好きな武道をヒーローとして崇め、ヒーローが踏み込んだ不良に道に自分も踏み込み、ヒーローの土俵で自分がヒーローよりも上に立てばヒナは振り向いてくれるはずだと思い込んだのです。
しかし、なんとも単純で浅はかな考えかと揶揄されかねない考えですが、人の夢や希望など多くの場合こんなもんじゃないでしょうか?確かに稀咲には人として大切な心が欠如しているのは事実ですが、その原動力と行動力には凄まじいものがあります。
自分の思いを遂げるまではどんな手段も選ばないという発想は、まさに現代社会の飽くなき欲求を追求する姿と重なる点があります。稀咲の存在はその考え方や行動を通して、「実はみんな同じ」だと訴えかけてるようにも受け取れます。
毛先哲太(けさきてった)を紹介
最後に、公式サイト覗いたら面白そうなことやってるみたいなので紹介します。
稀咲(きさき)も毛先(けさき)扱いされるなんて、かなりの嫌われっぷりですね。
ちょっとやり過ぎ感もありますが、面白いからOKということでしょうか。
景品で東京卍会の特攻服とか当たるらしいので、良かったら覗いてみて下さい。
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