ヴィンランドサガは戦争ものの作品なので残酷で惨いシーンが普通に描かれます。ただし欲望に駆り立てられたクズが行う蛮行も含まれるのでそれはまた別の話。以下、アニメ版を視聴していて分かったクズ行為についていくつかピックアップして紹介します。
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戦争を通じて人間の本質を露骨に表現した作品
トールズを罠にハメて誅殺するアシェラッド
ヴィンランドサガで主人公のトルフィンが長い旅に出るきっかけとなった大事件が父親であるトールズの死です。
トールズはバイキングのヨーム戦士団でかつて戦鬼(トロル)として恐れられた英雄でしたが、真の勇者とはなにかという答えに気付いたことでヨーム戦士団を抜けてアイスランドで家族と静かに暮らしていました。
ところがそんなトールズを放置する気のなかったノーム兵士団のフローキはアシェラッドに命じてトールズを騙し討ちして殺させます。
アシェラッド兵団は船上で手ぶらのトールズに完敗しますが、トルフィンをはじめ一緒にいる仲間の命を助けるため、敢えて罠にかかり大量の矢を浴びて死んでしまいます。
アシェラッドの行為はフローキの命令とはいえ、事情を知らない人が見れば明らかなクズ行為で、名前もアシェラッド(灰まみれ)であることを知ればますます軽蔑したくなります。
アシェラッドについては、ヴィン ランド・サガ～アシェラッドの魅力とトルフィンに纏わりつく亡霊癖、アシェラッドがビョルンと決闘した理由は友達になりたかったからで関連情報をより詳しく解説しています。
命を救ってくれたイングランド人の母子を見殺しにするトルフィン
父トールズの仇討のため、決闘するチャンスを与えてもらうことを条件にアシェラッドと行動を伴にするトルフィンでしたが、ある時イングランドで大怪我をして浜辺の村の住人に命を救われます。
キリスト教の信奉者でもある浜辺の住人(おばさん)は怪しがって助けないよう忠告する娘の言葉に耳を貸さず、意識のないトルフィンを介抱し食べ物まで与えます。
やがて意識を取り戻したトルフィンたちのもとへイングランド兵が調査のため訪れますが、おばさんはトルフィンを息子だと嘘をつき守り切ります。
トルフィンは、やがてアシェラッド率いるバイキングが浜に押し寄せることが分かっていたので、おばさんに早く逃げるよう伝えますが、事情を理解できないおばさんは逃げようとせず、とうとうバイキングの襲来に巻き込まれてしまいます。
この時、トルフィンは浜辺で茫然と立ち尽くすおばさんを目にして困惑しますが積極的に守ろうともせず、結局バイキングの一員として振舞うだけの結果となりますが、このクズ行為は後々トルフィン自身を散々悩まさせることにもなります。
無抵抗の人間を見殺しにしただけでなく積極的に虐殺や略奪に関わる行為を繰り返したバイキング時代の記憶は、トルフィンを悪夢でとことん苦しめPTSD状態に追い込みます。
トルケルに追われるアシェラッド兵団が農村で働く大量虐殺
バイキングであるアシェラッド兵団が侵略と略奪を繰り返していたことはバイキングとしては当たり前の行為で、なにも持たない者たちが何かを得るためには奪うしかなかった時代の常識だったとも言えます。
ただし、デンマーク王の命令でイングランドに遠征に失敗したアシェラッド兵団が越冬のために農村で働いた蛮行は万死に値すると言えるでしょう。
アシェラッド兵団はデンマークのクヌート王子を救出してイングランドから脱出を図りますが、戦略的に不利になる地域を避けて通るうち、とうとう大雪に見舞われて食料も底をつきます。
そんな時、なにもない山中で小さな村を発見したアシェラッド兵団は無抵抗な村人から全ての食糧を奪い取ったうえ、このまま活かしおいても食べさせる食糧が足りないという理由で村人を1人残らず虐殺してしまうのです。
アシェラッドがクヌート王子を救出した理由も手柄を独り占めにしたかったからで、そのために無抵抗の村人を皆殺しにしたわけですが、目的のためなら手段を選ばないアシェラッドはまさにクズのお手本と言えます。
否、バイキングはクズだったと言ったほうが合っているかもしれません。
無抵抗なのにバイキングに虐殺されるエイナルの母と妹
バイキングのクズ行為は探してみつかるわけではなく、探さなくてもみつかることがアニメ２期の冒頭で分かります。
そもそもバイキングとはデンマーク地方から他の国々へ武力で攻め込んで土地も食料も人も何もかも略奪する人種だったことから、当時は誰からも恐れられる存在でした。
そんなバイキングがイングランドでエイナルの家族にしたことはバイキングとしては普通の行為だったのでしょうが、無抵抗にも関わらず逃げようとしたエイナルの母親を背中から弓で射殺し、奴隷として連れ去ろうとしたエイナルの妹が抵抗したという理由で切り殺すのはショックでした。
エイナルは殴られて無抵抗の状態で船で奴隷として売り飛ばされてしまうのですが、こんなことが当たり前のように行われていた当時の北欧はまさにクズの黒歴史だったと言えるでしょう。
それでは、中東や中国をはじめ大文明が誕生した地域ではどうだったかというと、やはり同じようなことがあったようです。インドなど脱出不可能なカースト制度とかありますし、中東でも戦争は奪うことでしか水や食料を確保する手段がなかったからだと考えられています。
実は文明が発展する途中の段階において、人間はけっこうクズ行為を働いてきているのですが、現代人の目線で再現された時、良心が強すぎると見るに堪えないのは私だけでしょうか。
オルマルのためとだと偽り無闇に奴隷を傷つけるキツネ
ヴィンランドサガ２期でケティル農場の客人のひとりにキツネという仇名の男がいますが、キツネのクズ行為は頭目の蛇の逆鱗に触れて顔面陥没パンチを食らうほどです。
ケティル農場の主であるケティルにはオルマルというボンクラ息子がいますが、戦士で野蛮な兄のトールギルと異なりオルマルはプライドが高いだけで度胸がありません。
そんなオルマルが大口ばかり叩くのを見た客人のひとりキツネは、ある日オルマルに奴隷を殺させて人殺しの体験を積ませようと企みます。
人格の歪んだキツネは男は人を殺せて初めて一人前の戦士になれるものと考えており、オルマルが殺すのが奴隷なら誰にも迷惑はかからないと考え、勝手にケティルの所有物である奴隷を殺させようとします。
練習台に選ばれたエイナルは殺されないために必死で抵抗し、途中で人生に嫌気がさしたトルフィンがやるなら自分をやれと自ら志願したせいで全身傷だらけにされますが、これを客人の頭目である蛇という男に発見されキツネは顔面パンチを食らうとともに2度と勝手な真似をしないよう釘を刺されます。
キツネのしたことは人としても戦死としてもクズに値する行為ですが、ヴィンランドサガでは戦死という名のもとに力の弱い人たちを傷つける行為を正当化するクズキャラがけっこう登場します。
アシェラッドのように目的のなためならクズ行為も辞さないというわけではなくそもそもクズな人物がけっこう登場しますが、力だけが全てを支配する世の中では人間の負の象徴としてクズ行為が正当化されるのはある意味で不思議です。
戦費を調達するためにケティルを罠にハメるクヌート
デンマークのスヴェン王が死んだ後、兄のハラルド王と国を分けて統治していたクヌートでしたが、自らが考える楽土建設のため王は一人だけでよいと考えるクヌートは兄を毒殺して自身がイングランド王になります。
しかし、デンマークとイングランドを統治するには莫大な国費が必要で、クヌートは戦費を調達するために農民の領土を接収するしかないと考えます。
接収とは苦労して開梱した農地を王が取り上げて自分のものにするという意味で、これは頼めば断られるか反感を買って民意が離反するデメリットがあるので、言いがかりをつけて接収する計画を実行します。
そして、その犠牲者第１号がトルフィンのいるケティル農場だったのです。
ケティルは以前から豊かな農作物をたびたび献上しており、そうすることで自身の保身を図ってきたのですが、国が疲弊した今となってはそれが反って仇となったのです。
クヌートはケティルから農場を取り上げるために息子にわざとヘマを働かせ、抵抗して逃げ帰ったことを謀反だとして村に軍隊を動員するのです。
クヌートのクズっぷりはクズレベルが高いというか、知的で現代風にいうとヤクザ紛いの行為そのものだと言えます。
むしろ現代社会の成り立ちとも大きく関係が行為ともいえるので感心できる点もありますが、やはり苦労して開梱した農地を無条件に取り上げるどころか、武力で制圧しようとするなどもっての他だと言えます。
クヌートはビンラドサガ史上、アシェラッドに負けないクズ人間だと言えるでしょう。
とにかくヴィンランドサガで描かれるクズ行為は信憑性が高すぎるというか、歴史的に実際起きている事柄と重なるエピソードが多くて考えさせられます。
なお、クヌートのクズ行為に関しては、【ヴィンランド・サガ】ケティルさんのかわいそうな結末と現代の労働市場でも関連情報を紹介しています。
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