岸辺露伴のヘブンズ・ドアーは人間を本に変える能力で、相手の人生経験などあらゆる情報を読み取ることができる凄いスタンドですが、露伴はチープ・トリックという変わったスタンドに苦戦して危うく命を落としかけました。ほぼ弱点がないスタンドでしたが、露伴はある方法を使ってチープ・トリックを倒すことに成功しました。
ある方法とはチープ・トリックをあの世に連行してもらうことで、ジョジョの奇妙な冒険のシリーズを通して、スタンドはスタンドでしか倒せないというルールが無視された唯一のエピソードであることに間違いありません。
岸辺露伴がチープ・トリックに取り付かれたきっかけ
そもそも岸辺露伴がチープ・トリックというスタンドと戦うことになったのは、東方仗助とのチンチロリン対決に熱中し過ぎるあまり家が火事になっていることに気付かず、その修繕のために建築士を呼んだことがきっかけでした。
岸辺露伴が家に呼んだのは乙雅三(きのとまさぞう)という建築士で、一見なんの変哲もない普通の建築士でした。ところが、乙雅三は露伴の家に入るなり壁に背中をくっ付けて絶対に自分の背中を見せようとしません。
その拒絶ぶりはあまりにも以上で、階段を登る時もお腹の側を上に向けてクモのように歩く始末だったため、露伴はなんとしてでも背中を見てみたくなり、乙雅三を落とし穴に誘い込んで見事背中を見ることに成功しました。
ところが、背中を見られた乙雅三は人形のように小さくなって死んでしまい、乙雅三の背中に潜んでいたスタンドが背中を見た人間に乗り移ってしまいました。
乙雅三に憑依していたのはチープ・トリックというスタンドで、本体のない人間に取り付くだけの単独のスタンドです。そのため、憑依されていた乙雅三にはスタンド能力は発現せず、スタンドを持っているという自覚すらなかったのです。
また、露伴の家に入る際、露伴が用心のために入口で乙雅三を本にして調べていましたが、まったく怪しい点が見当たらなかったのもそのためです。
ちなみに、原作のコミックやアニメで登場する乙雅三のエピソードはドラマ版の『岸辺露伴は動かない』の第2期・第5話:「背中の正面」に登場する乙雅三とは異なります。
ドラマ版についての詳細は、『岸辺露伴は動かない』実写ドラマ全話【1話~8話】登場人物とあらすじで詳しく解説しています。
背中を見たものに乗り移るチープ・トリックの厄介な能力
チープ・トリックの能力はいたってシンプルです。人間の背中に憑依して、背後からボソボソと囁きかけるだけです。ああしろ、こうしろと、ボソボソ囁きかけて取り付いた人間の行動をコントロールしようとするだけです。
また、憑依しているとは言っても憑依された人間がスタンド使いになるわけではなく、スタンドの意思だけで行動している純粋なスタンドなのが特徴的です。
なにより厄介なことは、チープ・トリックには弱点というものがないのです。一度でも誰かの背中に憑依すると、憑依された人が他人に背中を見られない限り永遠に取りついたままになります。
岸辺露伴はこの事実をヘブンズ・ドアーで攻撃することで知ることになります。露伴はヘブンズ・ドアーでチープ・トリックを本にしてコントロールしようとしますが、憑依したスタンドへの攻撃は憑依された人間に返ってくるため攻撃できませんでした。
つまり、チープ・トリックはひとたび誰かの背中に取り付くと、誰かに背中を見せない限り絶対に取り除くことができない最強のスタンドだったのです。
全く攻撃力も持っておらず、ただ耳元でボソボソとつぶやくだけですが、憑依された人間はたまりません。ある意味こんなに強いスタンドはいないと言えます。
広瀬康一に救われたと思ったら危うく死ぬところだった
岸辺露伴はこの厄介なスタンドを取り除くために色々と模索してあることを思いつきます。そして、そのあることを実行するために目的地を目指して家を出ます。
当然、他人を巻き込めないので誰にも背中を見られないように、背中を隠して乙雅三が自分の家に来ることができたように、それを想像して奇抜な発想で街を歩いていきます。
そして、ようやく目的地に辿り着きかけたところで偶然にも広瀬康一という最も信頼する仲間に出会います。事情を知った広瀬康一は自身のスタンドであるエコーズで露伴の背中を見ないようにしてスタンドだけを攻撃します。
見事にエコーズの必殺技スリー・フリーズが命中し、岸辺露伴の背中から重たくなったチープ・トリックが剥がれ落ちようとしたその時、なんと岸辺露伴の背中が割けて血が吹き出します。
チープ・トリックは背中を見られる以外の理由で無理に引きはがそうとすると、憑依している人間の背中ごと引き剥がされるのです。
もはや手詰まりと思われた次の瞬間、岸辺露伴が薄笑いを浮かべます。そして、ついに目的地に到着したと勝利宣言をします。
「スタンドはスタンドでしか倒せない」の唯一の例外
そもそも、スタンドはスタンドでしか倒せないというジョジョの奇妙な冒険のシリーズを通した大原則というかルールがあるにも関わらず、チープ・トリックの存在は反則と呼べるものでした。
他人の命を犠牲にして誰かに背中を見せる以外に取り除くことができないというのは、倒す方法はないことを意味します。スタンドそのものに弱点がないケースは他にもいくつか存在しましたが、本体がいれば本体を倒すことで解決可能です。
しかしチープ・トリックは独立したスタンドだけの存在なので本体はありません。こいつを倒す方法はもはやスタンド使いのルールでは無理だということがわかりました。
そして次の瞬間、岸辺露伴が杉本鈴美がいる「振り向いてはいけない道」にいることが分かります。そして、それを知らないチープ・トリックを見事騙して振り返らせることに成功したのです。
この道は、この世とあの世の狭間のような存在で、一度でも振り向くとあの世のお迎えとして抵抗不可能な力を持った大量の手に掴まれ、あの世に連れていかれてしまいます。
後ろを振り向いたチープ・トリックはスタンドパワーとは無関係に強制的に岸辺露伴の背中から引き離され、自分だけあの世へ連れて逝かれてしまいました。
これは、ジョジョの奇妙な冒険で描かれるスタンド使いの闘いのなかで、物語の大原則でもある「スタンドはスタンドでしか倒せない」というルールを超越もしくは無視した、圧倒的な力によって勝利した唯一のケースです。
ジョジョの奇妙な冒険の第4部は、出張キャラクターでもある岸辺露伴や吉良吉影が登場する「死刑執行中・脱獄進行中」でも描かれている「屋敷幽霊」のように、スタンド能力以外にも霊的な存在が描かれていることがありますが、今回はまさにそのケースの典型例で、あの世の掃除屋みたいな存在にチープ・トリックが始末されたという結末でした。
また、そうなるように仕向けた岸辺露伴の頭脳プレーが描かれたエピソードでもあるわけですが、それにしてチープ・トリックは強かったですね。なんとか別の方法で引き剥がせないかと考えましたが、第4部ではこの結末が最も面白い勝ち方で、個人的には一番お気に入りのエピソードです。
岸辺露伴は『ジョジョの奇妙な冒険』第4部に登場します。
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対象作品:『ジョジョの奇妙な冒険』第1部~第5部
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