ヴィンランド・サガが実話に基づいて書かれているという噂が以前から巷で聞かれましたが、調べてみると史実にも基づき大筋は歴史的事実を正確に描きながらも、細部はオリジナルな表現が混ざっていることが分かりました。
そもそも、ヴィンランド・サガに登場するバイキングとは何なのか。バイキング発祥の地とされるデンマークとはどんな国なのか概要を知る必要があります。
また、史実と作品で登場人物や歴史的事実にどれくらい相違があるのか、分かった範囲で紹介しようと思います。
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デンマークの歴史
ヴィンランド・サガ1期~2期では当時の北欧をデンマーク中心に描かれますが、「デンマーク」とは「デーン人の国」という意味で、デーン人とはユトランド半島にすむノルマン人の総称を指す言葉で、特に厳密性のある単語ではありません。
そんなデンマークですが、歴史的には8世紀前半にオンゲンドウスというデーン人の首領が一大勢力を築いたことが始まりだとされており9世紀初頭にはゴズフレズ王という名の王様もいましたが、残っている資料から存在が確実に証明されているのはゴーム老王の築いたイェリング王朝だとされています。
ヴィンランド・サガに登場するのはスヴェン王が統治するデンマークですが、まさにイェリング王朝そのものに該当します。
そのため、ヴィンランド・サガで描かれているデンマークの中世の王朝が本当に実在したのかというと、間違いなく実在したものです。
また、スヴェン王や息子のクヌート、ハラルドも実在した人物で、ここまでは史実に忠実だと言えます。
ただし、デンマークのイングランド侵攻やその後の王位については、史実と若干異なる点があります。
クヌートのイングランド王即位は史実に基づいている
ヴィンランド・サガ1期で、スヴェン王は気に入らないクヌート王子を抹殺するために、戦に向いていないクヌートを敢えてイングランド前線に送り込み戦死するように仕向けますが、こういった経緯があったという史実はありません。
ヴィンランド・サガの作中ではスヴェン王が自らイングランドの戦地に赴くシーンは一度も描かれていませんが、史実ではスヴェン王はイングランドに何度も侵攻しており、イングランド王であるエゼルレッド2世を亡命に追み王位に就いたとされています。
ヴィンランドサガの作中ではスヴェン王がイングランド王になったことにはほとんど触れられておらず、エゼルレッド2世が亡命したという点は忠実に描かれています。
しかし、史実ではイングランド王となったスヴェン王は王位に就いてすぐに戦死してしまい、後継者にハーラル2世(ハラルド)が就いたとされていますが、ヴィンランド・サガではスヴェン王はアシェラッドに殺されるという全くオリジナルの設定に書き変えられています。
史実ではイングランドの王位は非常に短期間で5人の人間の手に渡って行きましたが、ヴィンランド・サガの作中ではこの辺の事情をあまり詳しく描くことはなく、ただ最後にクヌートが王位に就いたことをあっさり描いています。
下表は史実を正確に表したものです。
イングランドの王位に就いた人間の正確な順番は、
ハーラル2世 → スヴェン1世 → エゼルレッド2世 → エドマンズ2世 → クヌート王
の順番になります。
(史実)デンマーク王位・イングランド王位 即位した人物
スヴェン1世 | ハーラル2世 | クヌーズ2世 | エゼルレッド2世 |
エドマンズ2世 | |
1013年 | イングランド王に即位 | ノルマンディーへ亡命 | |||
1014年 | 死去(戦死) | デンマーク王に即位 | イングランド王に復位 | ||
1015年 | イングランド侵攻 | ||||
1016年 | イングランド王に即位 | 死去(病没) | イングランド王に即位 同年死去 |
||
1018年 | 死去 | デンマーク王に即位 |
バイキングの歴史
バイキングは9世紀~11世紀にかけてスカンジナビア半島を中心に存在した武装勢力のことを指し、イングランド、ノルウェーをはじめ西ヨーロッパの海沿いに巧みな航海術を使って侵略を繰り返したことで有名です。
バイキングの語源はフィヨルドだとする説もありますが厳密な意味は分かっておらず、発祥した経緯やどういった理由で侵略を繰り返していたのかについても諸説あり、いずれについても立証されていません。
バイキングは船の操舵が得意で行動範囲が広かった
ただし、海の民として船を操る技術に長けていたの事実で、その技術は戦争だけではなく交易にも大いに役立っていたはずだと考える説もあります。
ヴィンランド・サガで描かれるバイキングについては、他国を侵略して殺戮と略奪を好む好戦的な武装集団として描かれていますが、後にトルフィンがヴィンランドを目指して商人として出航するエピソードも用意されていることから、まんざら史実を無視しているわけではないことが分かります。
一説によると、航海術に長けていたバイキングは東アジアとも交易していたのではないかと考える説さえあるくらいです。
ビンランド・サガの作中で、アシェラッド率いるアシェラッド兵団が船を担いで運んで陸地の城を落すエピソードがありましたが、あれほど大きな船でなくてもバイキングが船を運んで陸上にいる敵を襲撃したというのは史実にもあることで、その機動力は驚異的だったようです。
デーン人とは
ビンランド・サガでは、「デーン人」という言葉が頻繁に出てきますが、デーン人とはアングロサクソンの側から見た時のデンマークからバイキングという意味合いが強いことが資料で明らかになっています。
そのため、デンマークに住むバイキングが自分たちの事をデーン人と呼んでいたかどうかは不明です。
その証拠にノルウェーのバイキングはノース人と呼ばれていたようです。
後に紹介するトルフィンのモデルになったソルフィン・カルルセフニやフローキのモデルになったフローキ・ビリガルズソン、レイフ・エリクソンもノース人です。
史実では下記の3名は新大陸発見など大きな功績を残したノース人として知られています。
- フローキ・ビリガルズソン 初めてアイスランドを発見したノース人
- レイフ・エリクソン 北アメリカ大陸を発見したノース人
- ソルフィン・カルルセフニ 北アメリカ大陸の到達に何度も成功したノース人の商人
一方で、ビンランド・サガに登場する上記3名をモデルにした人物は一部を除いて同じように描かれています。
- フローキ ヨーム戦士団の首領
- レイフ アイスランドのに住むノルドの老人で、かつてヴィンランドに到達したことがある。
- トルフィン 戦争と奴隷のない世界を実現するため商人としてビンランドを目指して出航する。
バイキングの呼び方は彼らが進出していった先で呼び名が変わりますが、フランス北部のノルマンディーへ侵攻した勢力はノルマンディー公国を樹立するに至り、ノルマン人と呼ばれるようになります。
ノルマンディー公国のノルマン人の一部はやがて傭兵として南イタリアに定住する集団も現れるようになり、11世紀~12世紀にかけて南イタリアを実質支配するに至ります。
このように、イングランドを征服したクヌートとは別にそれぞれ異なった道を歩んだ集団がそれぞれの地域で独自の勢力を拡大していくことになるのです。
ヴィンランド・サガの名前の由来
「ヴィンランド」はのレイフ・エリクソンが北アメリカ大陸に名付けた名前で、ブドウとか草原という意味だというのが有力説です。
レイフ・エリクソンが北アメリカ大陸に入植した経緯については「赤毛のエイリークルのサガ」や「グリーンランド人のサガ」という作品に記述されており、「サガ」とは中世のアイスランドにおいてノルド語で書かれた作品のことです。
つまり、「ヴィンランド・サガ」とは「北アメリカ大陸伝説」みたいな感じの伝記チックな書物の名前を指すことになりますが、こういう名前の書物は実在しません。
「赤毛のエイリークルのサガ」や「グリーンランド人のサガ」という名前のほうが史実に基づいていて良いとも考えられますが、漫画・アニメ作品のタイトルして日本語で書くとしたら「ヴィンランド・サガ」のほうがしっくりくるのは間違いありません。
とりあえず、「ヴィンランド・サガ」という言葉自体は架空のものです。
実在した人物と作中の名前の対比
ビンランド・サガでは実在した人物の名前と実績をそのまま描いているケースと、名前は同じでも実績を別の人に置き換えたり、名前も実績も置き換えているケースがあります。
下記に分かっている範囲で実在した人物と作中のキャラクター名を対比して示します。
史実 | 作品 | 史実と作品の違い |
スヴェン王 | スヴェン2世 | 死に方が全く異なる |
ハーラル2世 | ハラルド | 同じ |
クヌーズ2世 | クヌート | 同じだが史実ではもっと残忍 |
エゼルレッド2世 | エゼルレッド | 同じ |
エドマンズ2世 | エドモンド | 同じ |
トルフィン | ソルフィン・カルルセフニ | 生い立ちや理由は違うが目的地は同じ |
レイフ・エリクソン | レイフ | 北アメリカを見つけたのは同じ |
フローキ | フローキ | 全然違う。 史実ではアイスランドを最初に発見したノース人 |
トルケル | トルケル | 同じ。クヌートに服従したのも事実。 |
剛勇のビョルン | ビョルン | 出自が全く異なる。 史実ではヴァイキングの王ラグナル・ロズブロークの息子 |
エイナル | エイナル | 全然違う。 |
ただ、ひとつ分かったのは作者の幸村誠先生も適当に登場人物の名前を付けたわけではなく、北欧に現存する何種類かの「サガ」や北欧神話について勉強されて、そこから着想を得たのだということがよく分かりました。
まあ、ノンフィクションにできないこともなかったのでしょうが、せっかくの漫画なのだからオリジナルの視点も入れてオリジナル要素の強い作品にしたかったのではないでしょうか。
実際、これほど中世の北欧や北ヨーロッパにおけるバイキングの姿を面白く描いた作品は世の中に存在しません。
アニメ化されて内容がヒドイと酷評されることもあるヴィンランド・サガですが、それについてはヴィンランド・サガ【アニメ版】がひどい内容だという噂の真相で詳しく解説しています。
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