杉本と月島軍曹たちがロシア人の町を出ようとしていた頃、アシリパたちはキロランケに連れられてある町に来ていました。そこは30年前にアイヌの村があった場所で、今は犬の飼育場になってしまっていますが、キロランケアシリパにウィルクがここに会った村で生まれたのだと話します。
樺太はもともと日本の領土でもロシアの領土でもなく、樺太アイヌは誰にも縛られることなく生活していましたが日本とロシアが交わした条約により樺太はロシアの領土になり、村に住んでいた樺太アイヌの大半は北海道へ移住したといいます。
ところが、移住先で伝染病が流行り大勢が亡くなったため仕方なく樺太へ戻ってきた人たちが大勢いましたが、誰も元々村があったところへは帰らなかったということです。
月島軍曹の過去
一方、月島軍曹は町を去るついでに岩息舞治に絶対に戻って来ないよう念押しするとともに、杉本に対しても鶴見中尉から処遇に関して全て一任されていると釘を指します。
そして「自分を制御不能になれば取り返しのつかないことになる」と語る月島軍曹は、自分の身の上に起きた悲しい過去のことを思い出します。
それは明治29年、陸軍監獄に収監されていた頃のことです。
月島は監房で鶴見中尉と面会し、自分が死刑囚として収監されることとなった経緯を説明していました。
地元の佐渡では海藻のことを『いごぐさ』と呼び、評判が悪く誰にも相手されない父親の影響を受けた月島もまた悪童として皆に嫌われていました。
そんな月島を「はじめちゃん」と唯一名前で呼んでくれた娘のことを月島は好きになり、皆はその娘が癖毛だったことから「いごぐさ」と呼んでいたそうです。
やがて日清戦争が始まり出兵する月島は、帰国したら2人で駆け落ちしようと娘に思いを伝えます。ところが出兵して帰国した村では自分はすでに戦死したことになっており、好きだった娘は海岸に草履を残して行方不明とのこと。
噂の発信元が父親であることを知った月島は激高し我を忘れます。月島は父親のあらぬ噂を信じた娘が自殺してしまったと勘違いしたのです。
こうして月島は父親を撲殺した罪で死刑囚として収監されたのですが、話を聞いていた鶴見中尉が突然口を開きます。
「えごぐさちゃんはいきていたぞ」と。
鶴見中尉によると、娘は東京に嫁ぐことになったのですが、もしも月島が自分が別の男と結婚したことを知ったならきっと傷つくに違いないと案じ、家族ぐるみで芝居を打った結果、月島の父親に金を払い息子は戦死したと村中に吹聴するよう仕向けたのだと。
ところが、事実を知らない月島は自分を制御することができず最悪の選択肢を選んでしまったのだと。
こうして月島は鶴見中尉に自分の過去を告白し、鶴見中尉の温情でロシア語の通訳として罪を免除してもらうことになるのでした。
しかしこの時、月島はロシア語など一言も話せず、鶴見中尉の言葉を遮ります。すると鶴見中尉は「だったら死ぬ気で覚えろ」と月島を鼓舞するのでした。つまり鶴見中尉はロシア語に堪能な月島に目を付けたのではなく、目を付けた月島にロシア語を修得させたのです。
月島は死刑囚であるにもかかわらず罪を免除され第7師団の隊員として刑務所から出ることになり、日露戦争に出兵するまで鶴見中尉に恩を感じ続けます。
ところがそんなある日、鶴見中尉から聞かされていた「えごぐさ」ちゃんの話が鶴見中尉の作り話だったことを知ます。なんと月島が牢屋から解放された9年前、婚約者の骨が父親の住んでいた家の床下から発見されていたというのです。月島はこのことを戦地で会った同郷の兵士の話で知ります。
事実を知った月島は鶴見中尉の嘘に逆上し、再び自分を制御できなくなり殴りかかります。ところが鶴見中尉は冷静に「お前が死刑を受けれていたから。お前をどうしても救いたかった。誰よりも優秀な同郷の部下で、私の戦友だから」と月島を諭します。
これを聞いた月島は「はっ」と我に返り、婚約者を利用して自分を騙して欲しくなかったと泣きながら鶴見中尉に訴えます。
この後、月島と鶴見中尉は敵の爆撃に遭い、鶴見中尉は頭部にホーローのカバーを付ける原因となる重傷を負い、月島も腹部を損傷して命に関わる重傷を負います。
過去を振り返る月島の気持ちと『えごぐさ』の真相
ところで、月島は鶴見中尉の作ったストーリーの中で踊らされていただけで、肝心な時に自分を制御できず暴走するという過ちを繰り返しており、自分でもそれを理解しています。
樺太で過去を思い起こした月島軍曹は、鶴見中尉に騙されて部下になった自分を理解しながらも、それは感情をコントロールできなかった自分が招いた結果であると自覚しているのです。
そして暴走する杉本佐一を見て過去の自分と重ね合わせているのです。
鶴見中尉の作ったストーリーは実に手の込んだ巧妙なものです。
幼い頃より虐待されていた心に傷のある月島が、出征中にかけがえのない婚約者を悪名高い父親に自殺に見せかけて殺されたことを知り、逆上して父親を殴り殺したという筋書きです。
これは鶴見中尉の、「月島の親父がさんがエゴグサちゃんを殺したなんて、ちょっと盛り過ぎだとは思わんか?」という発言からも明らかで、鶴見中尉の話が真実だとすればエゴグサちゃんは最初に伝えたとおり結婚して生きていることになります。
しかし、エゴグサちゃんが殺されて骨が発見されたという設定の種明かしをせず、地元の村や軍の中央にはその通り信じ込ませることで、月島は周囲から同情的に見てもらうことができます。
つまり、鶴見中尉は月島を助けるためにを免除してもらえる同情的な状況を作り出したが、敢えて月島に種明かしをしなかったということです。
本当は生きているけれど、死んでいたという設定を工作したことが9年後にようやくバレるほうがまだマシだったのです。
ところで、鶴見中尉は本当にこんな手の込んだ仕掛けを考えて実行したのでしょうか?もしかしたら月島を引き込むためにエゴグサちゃんを犠牲にした可能性がないとは言えません。
この件は少々物議を醸しそうです。
28話に続く。
26話・28話のエピソードについては下記の関連記事を参照して下さい。
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