イカゲームのパクリ疑惑の材料としてカイジやバトルロワイヤルがよく出てきますが、まだ実際にカイジを詳しく見てない人は噂や評判だけで判断してるだけで、カイジの本当の面白さを知らない人も多いことだと思います。電流鉄骨渡りはカイジの中でもEカードと並んで究極の人気エピソードなので一度詳しく紹介しておこうと思います。
その前に逆境無頼カイジの主人公である伊藤カイジについて、その人柄・人間性について少し紹介します。
逆境部類カイジの人柄
どこから説明したら一番分かり易いかわからないのでだいぶ省略しますが、カイジは帝愛の利根川が言う通りクズです。
日々を無為に過ごし、せっかくコンビにバイトを始めたかと思えば、スタッフ仲間と控室で仲良く団欒している自分が辛くてうんざりするという、完全な社会不適合者です。
社会不適合者の唯一の最低な趣味
さらにカイジには最低な趣味がありました。日々の鬱憤を晴らすために路上駐車されてある高級車のエンブレムを折って持ち帰ったりタイヤをナイフで切ってパンクさせるという、はっきり言ってクズ以外の何物でもありません。
普段から借金に手を染める習慣があり、帝愛の遠藤とは借金取りと利用者という腐れ縁でした。そんなカイジがある日いつものようにベンツのエンブレムを折って憂さ晴らしをし、部屋に帰ってゴロっとしているところへ遠藤がやってきます。
そして、部屋に入った遠藤が目にしたものは紛れもなく自分の車のエンブレムだったことで、カイジのクズっぷりがあからさまになります。
簡単に騙される単純な性格
そして、遠藤にマウントを取られたカイジはズルズルと借金の口車に乗り、エスポワールというギャンブル船に乗り込むことになります。これは遠藤がカイジからさらにお金を巻き上げるために仕掛けた罠なのですが、カイジはあっさりと騙されてしまいます。
この辺の下りはイカゲームの主人公のクズっぷりとちょっと似てる気もしますが、どちらかというとカイジのほうがクズレベルが高いですね。イカゲームの主人公ソン・ギフンもクズですが、故意に他人に迷惑かけるような習慣は持ち合わせていませんから。
また、イカゲームで描かれるデスゲームの参加者はお金を獲得するためにある意味本人の意思で参加しているのに対して、カイジは参加せざるを得ない状況を巧みに作られています。
つまり、カイジは根っからの堕落した社会の落後者で、サラ金の取立人である遠藤の口車に簡単に乗ってしまうとういう、どうしようもないお人好しなのです。この辺はギャンブルで驚異的な力を発揮一面と比較すると、極端に抜けているというか真逆な印象を与えます。
どうしようもないお人好し
エスポワールで限定ジャンケンという、グー・チョキ・パーの3種類のカードを使ってバッジを獲得するゲームに参加するカイジですが、実は限定ジャンケンには裏があり、勝てばバッジ1コにつき100万で買い取ってもらえるかわり、負ければ地下帝国行きというデッドオアアライブのゲームだったのです。
また、限定ジャンケンはチームを組むことで絶対に勝てる仕組みになっており、仲間を集めたカイジは途中で勝利を確信しますが、安藤という仲間の裏切りで作戦が頓挫します。
この安藤守というキャラアは、カイジ史上他に例をみない最低最悪のクズキャラとして、その名を輝かせています。安藤が裏切る瞬間の心理状態が人間の醜さを見事に描けているのは、カイジが人気作品になり得たひとつのきっかけだとも言えます。
安藤の裏切りで崖っぷちになったカイジでしたが、機転を利かした行動で勝機を掴みます。ところが、ここで自分だけ大金を持って勝ち逃げできたにも関らず、石田さんというおじさんをお金で救ったことで、無事に船をおりれたものの莫大な借金が残ってしまいます。
エスポワールでのエピソードは安藤の件も石田さんの件も、どちらもカイジのお人好しな一面が強烈に表れています。なによりも勝負に勝つことに拘り、勝利のためならなんでもやるカイジですが、仲間だけは裏切らない、というより、例え裏切られても自分は裏切らない。
カイジの人柄のお人好しな一面もまた、カイジの人気のひとつであるのは間違いありませんが、このお人好しはエスポワールだけでは終わりません。
鉄骨渡り1回目 人間落し
いよいよ本題の電流鉄骨渡りの説明に入ります。
エスポワールを無事に下りたカイジにはまだ600万以上の借金が残っていて、それはカイジだけでなく、騙されてエスポワールに乗り込んだ帝愛サラ金の利用者たちの多くが同じ境遇に陥っていました。その中にはカイジが助けた石田さんや、コンビニバイトで同僚だった佐原もいました。
まず、その第1ゲームが鉄骨渡りですが、高層ビルの間に欠けられた高さ10メートルの細い鉄骨を2位までに渡りきれば賞金がもらえるというルールですが、もしも自分が3位で前に誰かがいたら、その人を突き落とさなくては自分が2位に入れません。
ここでは、エスポワールなど比べ物にならない人間の醜悪さが描かれていて、何人もの参加者が前にいる参加者を突き落としたり、突き落とそうとして自分も一緒に落ちたり、見るも無残な愚かな行為を繰り広げます。
結局、カイジはこの鉄骨渡りに失敗してしまいますが、ゲームを主宰する帝愛の目的は金持ちが貧乏人の必死になる姿を見て楽しむことだったため、帝愛はカイジたち3位以下の参加者にあえて再びチャンスを与えます。
鉄骨渡り2回目 電流鉄骨渡り
この2回目のチャンスは後出しだらけの帝愛にしては太っ腹な内容で、成功したら人数や順位に制限はなく、皆に1千万を出すという内容でした。
その内容というのが、スターサイドホテルの地上74メートルに設置された電流の流れる鉄骨を渡り切るというゲームで、失敗したら負け=死を意味する内容だったため、参加者は途中で辞退するものが続出します。
ところが、どうしても借金を帳消しにしたい参加者は、カイジをはじめ10人の参加者がこれに挑戦しますが、カイジ以外の参加者は転落して皆命を落としてしまいます。
この電流鉄骨渡りはもはや誰の背中を押す必要もない、純粋に橋を渡り切るだけで1000万を獲得できるチャンスでしたが、精神が錯乱する人や恐怖で進めなくなる人など、まさに究極・極限という言葉が相応しいゲームでした。
- 太田・・・吹いてもいない強風の幻覚で錯乱して転落死。
- 石田さん・・・恐怖で諦めてしまいカイジに1000万のチケットを託して自ら転落。
- 佐原・・・勇気を出して橋を1番に渡り切ったが、ビルの扉を開けてしまったため、中から噴き出た気圧風に吹き飛ばされ転落死。
この電流鉄骨渡りの最中は、カイジは精神が動揺して錯乱する参加者に声をかけて「大丈夫だ!」と励まします。佐原も幻覚で足が進まなくなりますが、カイジの励ましで渡り切ることができました。
誰も押さなくていいゲーム。誰も落とさなくていいゲーム。それでもカイジ以外は誰も他人を励ましたり助けようとはしなかったのが、電流鉄骨渡りというエピソードの最大の魅力です。
このエピソードではカイジのお人好しな一面というより、人間のクズでありながらも人間を辞めていない、辞めたわけではない、「生きてることが実は凄いんだ!」とカイジに気付かせるほど、すさまじい命の駆け引きが見事に描かれています。
ここで話をイカゲームに戻します。
イカゲームでの橋渡り ガラス板の二者択一
イカゲームの第5ゲームでもカイジで描かれたような、前の人を押さないと自分が生き残れないデスゲームが描かれていますが、これははっきり言ってカイジの鉄骨渡りをそのまま模倣したものです。
制限時間以内に渡り切る必要がある点は全く同じですが、どちらのガラスが割れるガラスか割れないガラスか判別できないので、迷って立ちどまる人がいると後続の人が進めません。
そのため、立ち止まって熟考する人はみな後続に突き落とされて死んでしまいます。これはカイジで描かれた1回目の鉄骨渡りと非常に似たシチュエーションで、簡単に言うとパクリです。
そして、なにより良くないのはいいところをパクっただけで、なにも+α(プラスアルファ)がないということです。強いて言うなら、制限時間があるにも関わらず渡る順番が後の参加者ほど割れていないガラスを選択して進めるので有利になる点は、鉄骨渡りとは異なります。
どんな映画やドラマの名作だってなんらかの作品のオマージュだったり、小説などなにかしらの作品から着想を得ているものです。
なので、パクリそのものは推奨はされないものの全否定はできません。しかし、パクっただけというのはなにか釈然としません。なぜ、そこにイカゲームらしさを加味しなかったのでしょうか?はたしてガラス板を踏ませるゲームに変えたところで大きな変化があったでしょうか。
もしもイカゲームの鉄骨渡りがもうひとひねりして、例えば武器を使用しても良いとかちょっとでも違った要素やルールが付け加えられていたら、ここまで批判はされなかったでしょう。
ところが、イカゲームの鉄骨渡り(ガラス板)はカイジの鉄骨渡りをほぼ丸ごとパクっただけの内容なのです。そこにはカイジで描かれているほどの人間ドラマもありませんし、生きてることそれ自体が凄いんだとカイジが悟るような感動的なシーンもありません。イカゲームはただ残酷でグロイことこの上無しです。
ネタを模倣した作品のことをパクリというのなら、イカゲームの鉄骨渡り(ガラス板渡り)は間違いなくカイジのパクリだと断言します。
ゲームに生き残った主人公のその後を比較
イカゲームの主人公ギフンと逆境無頼カイジの主人公伊藤開示についてですが、両名のゲーム終了後の心境の変化は完全に異なります。
ギフンは多くの参加者が命を落として自分だけが生き残ったことで生きる屍となり大金に手を付けることはありませんでしたが、カイジの生活は全く変わらずギャンブル以外に生き甲斐を見いだせない生き方が続きます。
イカゲームの主人公ギフンは、金持ちの暇つぶしのために主催されたゲームで多くの人が命を失い、大切な幼馴染まで死なせてしまったことで、奈落の底に突き落とされて駄目になってしまいます。
ところが、そんなギフンのもとへかつて自分をゲームに招待した人物から案内が届き、その人物の元を尋ねたことで衝撃の結末が訪れます。
一方で伊藤開示という男には、イカゲームのギフンに見られたような心の変容はなく、相変わらずパチンコ三昧で借金生活に身を落すありさまです。
このあたりは、漫画からアニメ、そしてアニメから映画化(実写化)されたカイジと、最初から実写で放送されたイカゲームとの大きな違いで、どうしても漫画から始まったストーリーは深刻さに欠けるというか、軽い感じがします。
結局、イカゲームは主人公がもう一度イカゲームに参加するのではないかと匂わせる終わり方をして、続編があることを期待させる演出で終わりましたが、カイジのほうはコミックですでに公開されている通り、兵藤会長の息子を交えた麻雀対決が次のエピソードになります。
イカゲームとカイジのパクリ疑惑について詳しく知りたい人は下記の記事も参考になります。
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