毎日風呂掃除をしてるので容器が黄色のバスマジックリンを当たり前のように使い続けてきました。ところが、もうすぐなくなりそうなのでスーパーへ買いに行ったところどの店も置いていません。店員に聞いても「ありません」と返事するだけで理由が分からず、代替品で済ませるしかないと思って詰め替え用の擦らなくていい商品を購入して帰りました。
ところで、以前まで当たり前のように店頭で購入できたバスマジックリンが突然姿を消したのはなぜでしょう?
もしかして昨今の物価の高騰や原材料の仕入れが困難なことと関係があるのかもしれないと思い、花王に直接電話して確認したところ、「バスマジックリン485㎖は現行品で、ただその店舗に置いていないだけ」との回答を頂けました。
今回、自分の中で勝手に独りでマジッリクン品薄事件を起こしてしまい、電話で販売状況を確認できることを知るまでにネットで情報収集をしたので、参考までにマジックリンの関連情報を紹介しようと思います。関連情報といっても成分ではなく容器についてです。
この記事はあくまでも個人的な見解を述べているものですが、記事を引用する際は引用元のリンクを設置するようにしています。
店頭から消えた洗剤には共通する特徴があった
まず、自分の生活圏内にあるスーパーマーケットやドラッグストアを見て回った結果、『マジックリン』という商標が含まれた商品そのものは販売されていることがすぐ分かりました。
私が探しているのは『バスマジックリン485㎖』という商標の商品ですが、バスマジックリンには容器の種類や液体の色、スプレータイプやボトルタイプなど何種類かあるのです。
擦らなくていいスプレータイプのマジックリンの詰め替え用
例えば、擦らなくてもスプレーで吹きかけるだけで浴槽掃除ができることで有名な『バスマジックリン』はほとんどのお店で販売されていました。スプレーの容器に入ったものより詰め替え用が多かったのが印象的です。逆に置いてない店を探すのが難しいくらいでした。
ところが、もっとも日本人に馴染み深いあの黄色いボトルに入った『バスマジックリン485㎖』が全く見当たらないのです。花王の『バスマジックリン485㎖』だけでなく業務スーパーに置かれていた黄色いボトルの『バスピカ』も姿を消しました。
バスマジックリン485㎖
『バスマジックリン』は製造業者が花王なので公式サイトで製造終了一覧に乗っているか確認したところ、黄色いボトルの『バスマジックリン』は製造終了リストに載っていませんでした。
それどころか花王の製品カタログにはきちんと掲載されていることが確認できました。
ということは、なにか事情があって一時的に生産を中止していると考えるのが妥当です。
例えば原料に使用される材料が入手できないとか。感染症の影響で生産ラインが止まっているとか。
黄色い『バスマジックリン』の容器はPP(ポリプロピレン)のボトル
ところで、どうして容器がPPの製品は販売されなくなったのに容器が袋+キャップタイプの製品は販売されているのか?
当初、私は製品の液体成分ばかりに着目しましたが、もしかしたら容器のほうに問題があるのかもしれないと考えるようになりました。
そこで、店頭から消えた商品の容器を製造するのに使用されるPP(ポリプロピレン)について調べてみました。ポリプロピレンに関する情報はポリプロピレンを使用した製品を製造・販売している企業の公式サイトで、信頼性の高い情報が大量に発信されているので本当に勉強になりました。
PP(ポリプロピレン)とは
化学品や包装用フィルムの専門商社である飯田工業薬品株式会社の公式サイトにポリプロピレンに関する基本情報が丁寧に紹介されているので引用させて頂きます。
ポリプロピレンは原油の一留分であるナフサ(粗製ガソリン)を分解精製して得られるプロピレンを原料に生産される合成樹脂です。
油田で算出された原油は加熱炉で蒸留されることによってLPガス・粗製ガソリン(ナフサ)・灯油・軽油・重油に分けられます。下の図は日本サニパック株式会社の公式サイトから引用したナフサの生成過程の図解となります。
原油を蒸留して粗製ガソリン(ナフサ)が生成される
- LPガス
- 粗製ガソリン(ナフサ)
- 灯油
- 軽油
- 重油(アスファルト)
この段階で生成されたガソリンを粗製(そせい)ガソリンと呼び、とりあえずおおまかにLPガスや灯油など他の成分と大雑把に分けられただけの状態のものを指します。
この粗製ガソリンをさらに分解することで、エチレンやプロピレンなどの化学物質を生み出すことができます。
粗製ガソリン(ナフサ)をさらに分解してプロピレンが生成される
- エチレン
- プロピレン
- ブタジエン
- トルエン
- ベンゼン
- キシレン
粗製ガソリン(ナフタ)を分解すると上記のとおり6種類に分かれます。
この中のプロピレンがポリプロピレンの原料になります。この2つは名前が非常に似ていますが全く異なる物質なので勘違いは禁物です。
プロピレンを原料にしてポリプロピレンが生成される
粗製ガソリンを分解して生成されたプロピレンは重合方法によってそれぞれホモポリマー・ランダムコポリマー・ブロックコポリマーという特性の異なる3種類の化合物に変換されます。
つまり一口にポリプロピレンと言っても、ホモポリマー・ランダムコポリマー・ブロックコポリマーの3種類あるわけです、私たちがスーパーマーケットで購入する『バスマジックリン』の容器などに使用されるのはホモポリマー(ホモPP)と呼ばれるものです。
また、固くて強度のあるブロックポリマー(ブロックPP)は車の部品や工業用パレットを始めとする耐衝撃性を要求される現場で重宝されています。
そして、ランダムポリマー(ランダムPP)は食品に使用する透明の袋やお菓子が入っている透明の袋に使用されます。私たちは透明の袋のことを総じて『ビニール袋』と呼びますが、ランダムポリマーが使用されていることもあればポリエチレンが使用されていることもります。
下の画像はプロピレンからPP(ポリプロピレン)が生成される工程を分かり易く図解したもので、株式会社プライムポリマーの公式サイトから引用させて頂きました。
食器洗いの洗剤もポリプロピレン製だが普通に販売されている
ポリプロピレンが原油を原料にしていることやおおまか生成方法は分かりましたが、それでは店頭からポリプロピレン製の容器に入った『バスマジックリン485㎖』が消えた理由が分かりません。
それどころか、冷静に見て回るとポリプロピレンを使用しているであろう容器に入った製品は、『バスマジックリン485㎖』以外にたくさん販売されているではありませんか!
例えば、これは最近買ったばかりの台所で食器洗いに使用する『キュキュット』ですが、この商品も良く姿を消しますがそれなりに継続して販売されています。
ところがキュキュットの裏側の容器の材料を表示している箇所を見ると、画像のとおりボトルがPPではないことに気付きました。
- ボトル:PET
- キャップ:PP・PE
- ラベル:PS
ボトルはPET製でポリプロピレン製ではありません。ということは、容器の材料にポリプロピレンを使用している商品が品薄になっていると考えるのはもしかしたら誤りかもしれません。
この時点でようやく自分の誤りに気付いたのでした。
実はただその店で販売されていないだけだった!
もしかして私は容器の材料であるポリプロピレンの原料が原油であることから、昨今の原油価格の高騰とバスマジックリンの不在を強引に結び付けていたのかもしれないと思い、尋ねても説明してくれないスーパーの店員より正確な情報を得る手段はないか探すことにしました。
するとなんと、花王の公式サイトに普通にフリーダイヤルの問い合わせ番号が掲載されていました。
花王の消費者相談室の問い合わせ先が掲載されたページはこちら≫
何度も閲覧していたのですが電話番号が掲載されているページの階層がけっこう深いというか、なかなか気付かなかったのです。
そこで電話してダイレクトに聞いて見たところ、それはただ単にその店に置いていないというだけで、『営業不足でございます」との返事を頂きました。
皆さん、思い込みには注意しましょう!
今回、花王の公式サイトで商品カタログを閲覧していて感じたのは、バスマジックリンはともかくけっこう多くの商品がある一定期限で製造終了しているという事実です。
こういう細かいことはテレビやネットで大々的に報道されない限り、普通に生活していると気付かないままになる可能性がありますが、花王のように大手企業で親切な会社は丁寧に製造終了一覧を掲載してくれているので確認できるは本当に助かります。
しかし、もしも今後行きつけのスーパーでお気に入りの商品が見られなくなった場合、それは本当に製造終了になっているケースもあり得るわけです。
また、今回のことがきっかけでポリプロピレンと原油の関係を知りましたが、案外当たり前のように使用している製品や製品の容器の多くが実はほとんど原油からできていることも分かり、世界情勢の在り方次第では本当にポリプロピレンの生産量や価格の高騰に結びつくこともあり得ることを理解しました。
エネルギー資源としての原油はすでに米国のシェール革命により克服できましたが、物質的な側面ではまだまだ石油依存を脱却できていないのではないでしょうか。
後日談、というかプチ情報
黄色いボトルのバスマジックリンが買えなかったことについて、地域の小売店を全て調べたわけではなかったので、時間がある時にまだ行っていないお店も見て回るようにしました。
すると、最近新しく出店したツルハドラッグに花王の製品が大量に陳列されていることを確認。
そして陳列棚にはお目当ての黄色いボトルのバスマジックリンが1本だけ残っていました。
隣には黄色いボトル用の詰め替え用の製品(黄色い袋状の製品)がたくさん残っていました。
私はすでに透明の擦らなくていいバスマジックリンの詰め替え用を大人買いしていたので何も買いませんでしたが、売っていないと思い込んでいた黄色いバスマジックリンは、実はあるところにはあるのだと知りました。
そういえば、電話で問い合わせた時に、営業が契約して商品が並ぶ店は決まっていると話していたので、置かれなくなった店は契約が切れたということでしょう。私は営業や購買の仕事は経験がないのでこういう事情にはやたら疎く、それを聞いて「なるほど」と思いました。
その時の会話では、「店舗名をお伝えしましょうか?」と親切に助け舟を出してもらったのですが、自分で探す楽しみがなくなると考えてお礼を言った後で「自分で探したいのでけっこうでございます」と断りました。
それにしても、黄色いボトルタイプは1本しか残っていなかったのは偶然でしょうか?やはり長い間身に付いた愛着や習慣で、多くの顧客は黄色いボトルを優先的に買って帰ったのでしょうか?
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