塩谷直義の監督作品サイコパスでは免質体質者の存在が常にテーマの鍵となります。シュビラシステムというコンピューターが支配する世の中で、唯一犯罪者として評価される可能性が無い存在が免罪体質者で犯罪を犯しても数値が悪化しないので絶対に裁かれることがありません。
サイコパスはシーズン1~3・4まで公開されていますが、どのシーズンでも必ず免罪体質者が登場し、物語の鍵を握るのも必ず免罪体質者です。
下記は全てのエピソードで登場した免罪体質者の名前と登場したシーズンの一覧です。
- 槙島聖護(まきしま しょうご) 登場シーン:ファーストシーズン
- 藤間幸三郎(とうま こうざぶろう) 登場シーン:ファーストシーズン
- 東金朔夜(とうがね さくや) 登場シーン:シーズン2
- 慎導灼(しんどう あらた) 登場シーン:シーズン3
- 東金美沙子(とうがね みさこ) 登場シーン:シーズン2
- 慎導篤志(しんどう あつし) 登場シーン:シーズン3
槙島聖護 カリスマ免罪体質者
槙島聖護の存在を抜きにして塩谷監督のサイコパスを語ることなど絶対にできません。
槙島聖護の存在はサイコパスのファーストシーズンと続く関連作品全てと関わりがあると言っても良いくらいで、特に狡噛慎也と槙島聖護の関係は特別です。
そもそもファーストシーズンの冒頭でオープニングテーマ曲が流れるより前に2人が初めて出会うシーンが描かれていることから、2人の出会いがシュビラシステムという矛盾の産物についてどう考えるかについての出発点だったとも言えるのです。
生まれた時から免罪体質者だった槙島聖護は多くの免罪体質者がシュビラ判定を気にしながら生きているのとは異なり、自分だけが仲間外れにされたような疎外感を感じて生き続けることになります。
それがいつ頃からの話だったのかは作中で触れられていませんが、狡噛慎也はそれについて「詳しくは聞いてみないと分からないが、聞くつもりはない」ときっぱり切り捨てています。
槙島は人間の輝きが見たかった
槙島聖護は生まれ持った類まれなるカリスマ性を武器にして、才能に溢れながらシュビラシステムに排除された人間を集めては、自らの目的を達成するために集まった仲間を利用して犯罪を繰り返します。
槙島聖護の最終目的はシュビラシステムの正体を暴くことで、側近の天才ハッカーであるチェ・グソンの協力を得て5年がかりでシュビラシステムのありかを突き止めますが、槙島はことあるごとに他人にシュビラではなく自分の意思で選択できるチャンスを提示して、その人の意思を試そうとします。
槙島の行動原理は、槙島が度々「人間は自分の意思に基づいて行動した時のみ生きる価値があると信じている」と口にしていることからも明らかです。
槙島はシュビラシステムを破壊したいと望む一方で、この狂ったシステムに支配されて生活する人々そのものにも興味を持っており、「人が本当に生きるに値する存在なのか確かめたい」と思いそのまま行動していたのです。
想像通りの最後を迎える槙島
結局、槙島の作戦は常守朱に邪魔をされて失敗に終わり逮捕されてしまいますが、シュビラシステムは槙島をシステムの新たな一員として勧誘し、槙島はこの誘いを拒絶して逃走します。
そして最後は日本の穀倉地帯へ赴き単独でバイオテロを企て、逃亡執行官になってでも槙島を殺害しようとする狡噛とドミネーターを抜きにした殺し合いへと発展します。
ところで槙島はかねてより自分が狡噛以外の誰かに殺されることなどどうしても想像できないと感じており、狡噛のほうも自分以外の誰かが槙島を殺すなど想像できないと確信していました。
槙島と狡噛はシュビラシステムという矛盾の産物を共通の題材として出会うべくして出会い、なるべくして悲惨な最後を迎えることになります。
なお、サイコパスにおいて槙島の存在はかなり特別なので、サイコパスの槙島聖護~伝説のカリスマキャラにして凶悪な殺人犯の魅力を考察 でも別途詳しく解説しています。
藤間幸三郎 シュビラに取り込まれた男
藤間幸三郎は公安が標本事件と呼ぶ被害者を特殊な液体で固形化して標本にしたうえで、街のなかに放置するという猟奇殺人事件の実行犯で、学校で教師を務める傍ら槙島と深く関わっており、2人は標本事件で繋がっていました。
ところが、藤間は公安に捕まり槙島同様シュビラシステムからシステムの一員にならないかと提案された時、すんなりと提案を受け入れたようです。
後に公安局局長の禾生壌宗(かせいじょうしゅう)の姿をした藤間と再会した槙島は、その脳だけがかつての藤間であることを聞かされ驚くとともに、シュビラシステムの正体やその利用とするところについて全く共感しないどころか「まるでバルニバービの医者だな」と皮肉を吐き捨て、藤間の義体を破壊してしまいます。
槙島にとってシュビラに迎合した藤間にはもはや人としての輝きを見ることができなかったのでしょう。
藤間は槙島ならシュビラの一員になることがどれだけ素晴らしいことか話せば分ると考えたようですが、全能者としての愉悦に浸る藤間と槙島の間には越えがたい壁があったのは間違いありません。
東金朔夜 史上初の人工的免罪体質者
東金朔夜はサイコパスのシーズン2で変質的な執行官として登場します。
そもそも東金朔夜は母親の研究の一環で人工的に生まれた免罪体質者で、多くの実験のなかで唯一実験に成功した事例の第1号だとされています。
しかしその生い立ちはあまりにも悲惨で、犯罪係数が悪化しないことを確認するために動物を殺すことを常習的に強いられた結果、罪悪感を持たないモンスターになってしまったのです。
東金朔夜が異常な行為でも喜んで実行したのは母親が褒めてくれるからであり、それ以外の理由はまったくありませんでした。
ある日、生まれつき免罪体質者である母親がシュビラの一員になるため別れを告げた時、まだ幼くて感情を制御できなかった東金朔夜は母親である東金美佐子を日頃動物を殺害していたように刃物で滅多刺しにし、その影響で犯罪係数を悪化させてしまいます。
その後、成長して執行官となった東金朔夜は監視官を罠にハメて色相を濁らせてはドミネーターで処分するという異常行為を繰り返し、公安局の監視官でもアクセスできないAAA(トリプルA)レベルの極秘の存在として生き続けるのでした。
東金昨夜は「白いものは黒く、黒いものはより黒く」という強迫観念に駆り立てられ、どうしても色相が濁らない常森朱を黒く染めようとしますが失敗に終わります。
最後はシュビラによって存在を認知され犯罪係数300オーバーが測定された鹿矛囲桐斗(かむいきりと)とエリミネーターで打ち合いになり、腕に重症を負い出血多量で死亡します。
死ぬ間際、駆けつけた霜月監視官がドミネーターを向けて計測した犯罪係数は伝説に残る899を記録しています。
慎導灼 特殊能力を持った生まれつきの免罪体質
慎導灼(しんどうあらた)はサイコパスのシーズン3で登場する監視官で、常森朱とは面識がありませんが共通している点があります。
それは、シュビラシステムを心の底では信用していないということです。
もっと簡単に言うと常森朱も慎導灼もシュビラシステムが嫌いです。
サイコパス3は色々伏線が隠されていて、どうも慎導灼が監視官になったことには常森朱の意思が関係しているみたいです。
そもそもシュビラシステムはいずれは世間にその存在を公表することを前提に開発・運用されているので、シュビラ自身も現時点の運用体制と世間の認識の隔たりや橋渡し役の必要性も認識しています。
その意味で、常森朱や慎導灼のようなエリミネーターが起動しても発砲したくない自分の意思のほうを尊重する人物を特別扱いしているのは間違いありません。
慎導灼は生まれついての免罪体質者ですが、その事実は物語の終盤まで明かされません。
これはどうも父親である慎導篤志がなにかしらの防御手段を講じたようで、死んだ父親も同じようにメンタルトレースができたことから、この能力となんらかの関係がありそうです。
サイコパスのシーズン3はファーストシーズンやシーズン2と趣がかなり異なります。
慎導篤志はかつて厚生労働省のキャリアとして働いていましが理由があって謎の死を遂げます。
一方で、慎導篤志のメンタルトレースや免罪体質者について知識がない梓澤は、自分が一シュビラの一員に迎えてもらうたいという突拍子もない野望を持ち、誤った方法で目的を果たそうとします。
最終的にシュビラシステムに歓迎されて一員になるよう誘われるのは慎導灼だけで、反対に免罪体質者ではない梓澤はシュビラシステムに拒絶されるだけでなく執行対象として判断されます。
シュビラに迎えてもらうために色々画策する人物が免罪体質者の存在すら知らないというのも設定的にどうかと思いますが、この辺りはサイコパス3の評価が著しく低いこととかなり関係があります。
また、主人公の慎導灼の能力であるメンタルトレースについては謎が多すぎます。
メンタルトレースはファーストシーズンで常森朱が槙島の顔を画像化するために装置を使って利用したことがありますが、身体へのダメージが大きすぎて危険が伴います。
ところが慎導灼はこのメンタルトレースを装置も使わずその場で自己催眠を使って実現するという離れ技をやってのけるのです。
もちろん、そばで誰かに手綱を逃げってもらっていないと帰ってれなくなる危険性があり、「雨が降っている」という暗示で催眠状態に入るのとは逆に、「雨は止んだ」という言葉で呼び戻してもらう必要があるので、一人の状態で実行して失敗すると廃人になりかねません。
とはいえ、慎導灼のメンタルトレースは特殊能力というよりも超能力と言ったほうがしっくりきます。
ところで、サイコパス3はビフロストという犯罪組織がシュビラシステムの補助システムであるラウンドロビンを悪用して不当な力を得ようとするのを阻止するのが大きなテーマですが、梓澤のように純粋にシュビラの一員になりたかっただけの人物がいたのも事実です。
最後まで見て思ったのは、ビフロストを阻止することと梓澤を阻止することのどちらが本命だったのかよく分からないということです。
また、ストーリーの中における慎導灼の能力の位置付けも曖昧です。
メンタルトレースが個別の事件の解決に繋がるエピソードはありますが、それとビフロストの捜査がどう繋がるのか、非常に曖昧です。
最終的にハッピーエンドになったのは分かりますが、分からない点が多すぎて消化不良だというのが本音です。
ひとつ言えることは、「シュビラシステム」「難民」「厚生労働省」「外務省」この4つは大きなキーワードで、物語の底辺を流れる本当のテーマと関わっているのは間違いなさそうです。
サイコパスのシーズン3は劇場版「恩讐の彼方に」で狡噛慎也が帰国する決意をしたのとも関係が深そうです。
なお、国外逃亡していた狡噛慎也が帰国して外務省に入省した経緯に興味がある人は、【サイコパス3】狡噛慎也がなぜ外務省に入ったのか経緯を詳しく解説で詳しく解説しています。
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